おなかの臓器でも、比較的裏側の臓器は、はっきりとした腹痛を伴わないこともあります。図2に示したように膵臓、腎臓などが、体の裏側にある臓器です。膵炎や膵臓ガンなどでは、背中の真ん中に痛みをおこします。十二指腸潰瘍も膵臓の近くにあるため、前側だけでなく、背中側に痛みを起こすこともまれではありません。腎臓は背中の両脇にあ

り、腎結石、尿路結石、腎盂炎などで痛みがきます。背中は肋骨や、強い筋肉に包まれているため、押しても手が臓器に届きません。そこで、トントンとたたいて(打診して)痛みの有る無しを確かめます。
 腹痛と、おなかの臓器のだいたいの位置関係が理解できたでしょうか?この位置を基本としながらも、実際は各人で痛みの位置と臓器の関係が少しずつ違っているため、
過度の自己診断は禁物です。しかし、おなかが痛くなったらあわてないで、だいたいの位置から、どこが原因か考えてみてから受診するのも、自分の体を理解する意味で良いでしょう。おなかの病気には、盲腸のように急ぎのものもあります。



図2

腹痛への対応

2)どんな便か、必ず確認する
 お通じは、英語の一般用語で、bowel movementと呼ばれます。直訳すると、腸の動き、内臓の動きという意味です。下痢をしているか?便秘をしているか?便の色は、いつもと同じか?もし、真っ黒な便が出ていれば、食道、胃、十二指腸などから出血していることが予想されます。茶色味、黄色味が淡く白っぽければ、胆汁が便に流れ込んでいないことが考えられ、胆のう、肝臓、膵臓などに問題がありそうです。もちろん血便などはもってのほかです。便は内臓の健康を見るバロメーターとして、普段から常に観察しておく癖をつけておきましょう。

 おなかが痛くなったらまず、次のことを思い出してください。
1)5W1Hを思い出して
 おなじみの、いつから(when)、どの場所が(where)、だれが(who)、なにを(what)、どうしたか(how)という視点で腹痛を思い出してください。いつから?おなかのどこが痛むか?自分以外にも同じ病気の人がいる?何を食べたか?便秘をしていないか?吐き気はあるか?熱はないか?生理との関係は?など、思い出せるだけ思い出して、できれば紙に書き留めてみると良いでしょう。適切な診断のために有用な情報が、そこにたくさん隠れているからです。

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