運動は筋肉と骨の協同作業

 筋肉(骨格筋)は単独で存在していては何の働きもできません。多くの骨格筋は筋肉の先端が骨に達しています。この筋肉の手前側(起始部)と先端側(停止部)の両端部は腱と呼ばれ、筋細胞ではなくて硬い繊維質のような物質でできています。腱が骨と筋肉をガッチリと結びつけていることから、筋肉が収縮するとつながっている腱が、末端で結びついている骨を筋肉が縮む方向へ引っ張ります。この筋肉の動きは、関節をテコとしてその先の骨に伝わるため、効率よくやりたい運動を行うことができるのです。(図の曲がっ

た↑)
 筋肉の動きは、脳の前頭葉の運動野からつながる神経に操られています。脳からの指令は脊髄を通り、末梢神経を介して筋肉へ伝わると、指令に応じた部位が指令に沿った収縮を行います。ここで、腱、骨は直接神経の指令を受けることはありませんが、腱はその突っ張られた力の程度を感知し、それがどの程度か脊髄や脳へ伝える感覚器としての働きもあります。
 さて、この様な筋肉、腱、骨の協同作業は、そのどこに問題があってもうまくいきません。筋肉や腱が断裂していてはそもそも力を伝えることができません。骨折があっても思い描く運動が不可能となります。筋肉や腱にほんの少しの小さな傷があった場合はどうでしょうか?この場合は、ほんの少しの収縮でも、小さな傷が押し広げられるように働くため、いやな感じの痛みが走り、断裂を防ぐために自己防御的に力を抜く無意識の現象が起こります。このことは、少しの傷が存在するだけで、筋肉に力が入らなかったり、使うと痛みが走ることを意味します。


筋肉に小さな傷があると、収縮したとき傷口が広がる方向に力がかかり、イテテ・・・と力抜ける。

よく出会う筋肉の傷害

肉離れ
 よく耳にする筋肉の状態です。これは、筋肉が一部または全部切れた状態で、激しい運動やとっさの動きによって、急に強い力が筋肉にかかり、筋肉に傷が入ることです。筋肉が切れるというと豚肉を包丁でブツンと切るイメージですが、実はそうではなくお肉を左右から引っ張ると、ミリミリいいながら少しずつ伸び、もっと力をかけると所々プツプツと切れ、切れてしまったところが増えてくると最終的にブツッと切断されます。これが肉離れのイメージで、軽いものは肉眼的に何でもないように見えますが、顕微鏡レベルで観察をすると、筋線維が所々プツンと切れています。肉眼的に確認できるような切れ目があるなら痛くて動かせません。しか

し、細かい断裂なら、痛みを伴うもののある程度動きます。皆さんが普段経験する筋肉痛は、このような細かい断裂が原因で、小さな肉離れの一種です。筋肉は再生力があるため、細かい断裂であれば、それ以上力をかけなければ自然に修復します。軽いものなら1ヶ月程度でほぼ治ります。それ以上力をかけないと言うのがポイントなので、安静にして傷ついた筋肉を動かさないか、動かさないで済むようなギブスやサポーターの利用などが勧められます。痛い場合は痛み止め(ロキソニンなどのNSAIDs)も有効ですが、根本的な治療にはならないため、痛み止めを飲みながら動かしているといつまでたっても治

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