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1)鼻腔の主な常在菌: 鼻の穴の付近には、皮膚の代表的な常在菌の表皮ブドウ球菌や黄色ブドウ球菌がよく見られます。少し奥の粘膜を診ると、連鎖球菌の仲間や、コリネバクテリウムなどが住んでいます。また、これらの比較的おとなしい細菌の他、様々な病気の原因となる肺炎球菌や、インフルエンザ菌(Hib:Haemophilus Influenzae b)、髄膜炎菌、クレブシェエラ(肺炎桿菌)、緑膿菌などが見られます。 2)口腔や咽頭の主な常在菌: 有名なもの、重要なものについて述べます。まず、連鎖球菌の仲間である、A群溶連菌はいわゆる溶連菌感染症を起こす悪玉菌です。これに加え、虫歯の原因となるミュータンス菌などが有名です。これらの菌と競合して悪玉菌の発育を抑えている、善玉の連鎖球菌(Str. Salivarius)などもいます。また、歯茎に住み、歯周病を起こすアクチノマイセスやバクテロイデスなどの嫌気性菌も住んでいます。歯垢は食べ物のカスが溜まったものと勘違いしている方がいますが、この食べ物のカスを栄養とする口腔内の細菌が繁殖し、細菌の塊と言ってよい物質が歯垢です。ちなみに、歯垢1mg(1gの千分の一)になんと100億個の細菌が含まれています。これらは主に弱毒菌ですが、血液に入ると血栓を作って心筋梗塞の原因となったり、誤嚥して肺炎につながることもあるため、歯垢と言えどもバカにできません。 さて、ここで代表的な菌について整理しておきます。 表皮ブドウ球菌:皮膚の善玉常在菌で、皮膚表面を酸性に保ち、他の菌の発育を妨げます。
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黄色ブドウ球菌:皮膚の化膿の原因となるやや毒性の強い菌です。膿や痰、かさぶたが黄色くなるのが特徴です。一般的な化膿巣だけでなく、伝染性膿痂疹(とびひ)や、毒素性の食中毒の原因菌としても知られています。また、MRSAは、この菌がペニシリンに耐性をもったもので、抗生物質が効きにくいタイプです。 肺炎球菌:誤嚥性肺炎や副鼻腔炎合併による肺炎ほか、乳幼児では、中耳炎、副鼻腔炎から波及する髄膜炎の主な起炎菌でもあります。 インフルエンザ菌:現在はインフルエンザはウイルスによって起こることが知られていますが、この菌がインフルエンザの原因と疑われていた時代がありました。こちらも肺炎だけでなく乳幼児では、髄膜炎の原因菌として知られています。 緑膿菌:MRSAが出てくる前は抗生物質耐性の菌の代表として知られていました。比較的おとなしい菌で、緑色の化膿巣を作ることが名前の由来です。 クレブシェエラ:緑膿菌とともに腸内細菌の一種です。肺炎の他、膀胱炎などの尿路感染症でよく見られます。 A群β溶血性連鎖球菌:いわゆる溶連菌と呼ばれる菌です。常在菌ではあるものの、化膿性扁桃炎やとびひなどの急性の感染症を起こすだけでなく、猩紅熱や免疫の異常を生じ皮膚や関節、心筋に炎症をきたすリウマチ熱、血管性紫斑病、慢性腎炎に至ることもある急性糸球体腎炎などの原因でもあり、油断出来ません。菌自体はペニシリンなどの抗生物質が効きやすいので、早期に治療ができれば問題ありません。迅速診断キットがあり、菌がいるかどうかの確認は容易ですが、溶連菌がいても"溶連菌感染症"とは限らず、判断が難しいところです。
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