すこやか生活

常在菌とその働き

 お腹の中の赤ちゃんは外部と隔絶されているため、全くの無菌状態です。しかし、生まれてくるとき産道(膣)を通り、初めて外界の細菌と接し、外に出ると空気中に浮遊したり母親の乳房や皮膚に住み着いている細菌をもらうなどして、胃腸を含め、外界と通じている部分に様々な細菌が住み着きます。この、人の体に住み着いている細菌や真菌(カビ)などを常在菌と呼びます。通常、常在菌はおとなしく人と共生してい

る菌がほとんどなため、菌がいても体調が悪くなることはありません。
 人の体の細胞は、一般に60兆個あると言われていますが、大腸だけでもこの数を上回るほどの細菌が生息しています。細菌の生息密度は、部位によって異なりますが、表は主な部位の数を示しています。これだけ多くの菌がいても体調を崩さないのは、彼らが人体に対して重要だからです。次に常在菌の主な働きをまとめました。


体の各部位の細菌密度

1)拮抗現象
 体のほとんどの部位では、常在菌は1種類ではなく、多種多様の菌達がある一定の割合で住み、平衡状態と呼ばれる安定した環境を作っています。ここに、外部から新たに別の病原菌というよそ者が進入しても、その環境に馴染めず生き残れなかったり、病気を誘発することができません。このような細菌群たちのスクラムを拮抗現象と呼びます。抗生物質などで、常在菌の一部が死んで平衡状態が崩れると、拮抗現象が起こらず、様々な感染症がその場所で発生します。抗生物質で起こる下痢や、カンジダ性膣炎などがこれです。
2)免疫系刺激作用
 体を無菌状態に保った飼育動物は、血液中の免疫グロブリン濃度が低く、細胞

性免疫も弱く、外敵の攻撃に対する抵抗力が弱いことがわかっています。免疫は様々なきっかけで起こりますが、全く無菌の状態より、善玉とはいえ時に暴れる可能性のある他人が同居していると、万一の場合に備え、体の免疫もいつでも出動できる様に準備を整えます。よい意味の緊張状態ですね。この結果、本当の外敵が入ったときに迅速に対応できます。この準備状態が免疫刺激作用です。
3)ビタミンB群等の産生
 腸管に常在する細菌は、その代謝の中で、ビオチン、リボフラビン、ニコチン酸、パントテン酸、ピリドキシンなどを作っており、その一部は宿主の人間が使っています。抗生物質などでこの働きをしている菌を殺してしまうと、ビタミン不足に陥ります。

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善玉常在菌を育てるために