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上気道炎を起こす可能性のある主な原因は次の3つです。①ウイルス、②細菌、③アレルギー。ここで、この3つを簡単に説明しておきます。①ウイルスは、DNAやRNAなどの他、自分を包む袋ぐらいしか持たない簡単な構造をしているので、単独では生きられません。このため、人の細胞に入り込み、その様々なパーツの働きを借りて増殖し生きていきます。電子顕微鏡でしか見えない大きさの微生物です。(1000~10000倍拡大)②細菌は、一つの細胞として生きていける一通りのパーツを持っている単細胞の微生物で、主に人の細胞の外側に巣くっています。細菌は光学顕微鏡レベルで見ることができます。(200~600倍拡大)③アレルギーは過敏反応とも言われ、花粉やホコリ、卵白などに含まれるタンパク質やデンプン質などの異物に対して、それを排除する免疫反応が行きすぎておこる病気です。鼻水が止まらなくなったり、鼻づまりなどの症状がでます。 これら3つの原因の風邪達は、医学の進歩によって、ウイルス性のインフルエンザやEBウイルスによる伝染性単核球症、麻疹や風疹、細菌性の溶連菌感染症(扁桃炎)、百日咳、結核、アレルギー性のスギ花粉症などの原因が明らかにされ、各々一つの疾患として風邪から独立していきました。そして、明らかな病名のつかない"いわゆる風邪"は、あまり毒性の強くないウイルスや細菌による炎症、具体的な原因のはっきりとしないアレルギーやそれがこじれたものが残りました。ウイルスや細菌の中には必ずしも人にうつらず、日頃人間に同居していて普段はおとなしくしているものもいます。この常在ウイルス、常在菌と呼ばれる微生物が、体調を崩したときに暴れることもあります。これらも"いわゆる風邪"に含まれています。
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この中でもアレルギーによる"いわゆる風邪"が、実は一番多いと思います。スギ花粉症やハウスダストなど明らかな原因を特定できなくても、鼻や喉、気管が過敏に反応し、炎症を起こすこともあります。花粉やホコリなどの物質以外でも、冷たい空気に触れたり、低気圧、乾いた空気、アルコールの飲み過ぎなどがきっかけになり、上気道炎をまねいていることもよくあります。これらの原因がどのように上気道炎症状を起こすか、仕組みを説明するのはとても困難ですが、最も一般的な解釈は自律神経の反応です。 例えば、冷たい空気を吸うと鼻水が出たり、気管支の平滑筋が収縮して狭くなります。これは、主に副交感神経という自律神経の反射です。冷たい空気を気道に吸い込みすぎないようにする防御反応のようなものです。この反応は、寒暖差アレルギーや血管運動性鼻炎などと呼ばれることもあります。同様な反応は乾燥しすぎた空気を吸った場合にも起こります。 副交感神経の過剰反応が起こると、鼻水や鼻づまり、咳などの症状がおこります。鼻汁がノドの方へ垂れると(後鼻漏)ノドがヒリヒリ痛みます。これらは"いわゆる風邪"の症状そのものです。この反応に合併して常在菌が暴れると、黄色い鼻汁やタンがでる副鼻腔炎、耳管がつまって痛い中耳炎、そしてタンや咳が止まらない気管支炎や肺炎へ進むわけです。 アルコールの飲み過ぎや低気圧も、鼻づまりや気道狭窄など風邪と似た症状を誘発します。いったん上気道炎になるとその先は同じです。これらの"いわゆる風邪"はうつるもの(感染症)と断定することに違和感を覚えます。風邪をひいたと思ったら人にうつされたと被害者意識を持たず、何が起きているか振り返ってみましょう。
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