すこやか生活

風邪とは?

 「風邪をひいた。」と言って、受診する方が多い季節です。そこで、「どんな症状ですか?」と尋ねると、「何となくだるい。」「少し熱っぽい。」という漠然とした症状から、「ノドが痛い。」「鼻水が出る。」「セキで眠れない。」という少し具体的な症状の方、「何となくノドが痛くクシャミが出ると思っていたら、午後から寒気がして熱を測ったら38.5℃ありました。」と、話を聞くだけでインフルエンザではと予想できる症状がそろっている方まで、本当に様々です。このような上気道症状のほか、「胃がむかつく。」「お腹が痛い。」「下痢をする。」など、お腹の症状を風邪だと思って来院する方もいます。
 また、自分の症状をひとしきりしゃべったあと、「私は風邪ですか?」と質問してくる方もいます。そこで、「風邪ってなんですか?」と、逆に尋ねると、「うーん…。」と、言葉に詰まる方がほとんどです。ところでこの質問を医者にしたらどのような答えが返ってくるでしょうか?正解は、「よくわからないが、上気道炎の総称だろう。」です。これは、風邪という病名はないため定義も決まっておらず、セキやクシャミ、鼻汁、ノドの痛

みなど上気道の症状を持つ状態を、何となく風邪と呼んでいるだけだからです。これでは、あまりにも漠然としすぎているので、ウイルス性と思われるものは"風邪症候群"などと分けて呼ばれることもあります。
 ところで、風邪は万病の元ということわざどおり、風邪(上気道炎)と思っていたらこじれて肺炎になったり、長引く風邪だと思っていたら結核だったなど、上気道症状が命取りの感染症と結びついた不幸な時代が人類の歴史の99.9%を占めていました。この時代には、細菌やウイルス感染が命を脅かす原因のほとんどで、現在死因のトップをひた走るガンが発生するまで生きられず、感染症で亡くなる方がほとんどでした。そこで、"風邪=感染症=怖い病気の始まり"という図式が出来上がり、遺伝子治療が可能なほど医学が進歩した時代になっても、この呪縛から医師も患者さんも逃れられていません。
 今回は上気道炎を起こす様々な原因を少し整理し、少しでも風邪による不愉快な症状や、危ない合併症から皆さんが回避できるように考えていきたいと思います。






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