体の運動のほとんどすべては筋肉が行っています。しかし、単に動くためだけでなく次のような作業もしているため、筋肉に傷害が起こると以下のことができなくなります。なお、ここで言う筋肉は、内臓の平滑筋や、心臓の心筋ではなく骨に付く、骨格筋です。
1)体を支える
 筋肉は重力に拮抗して、緩やかに収縮し、適度な緊張を持続しながら体を支えています。まっすぐ立っていたり、頭を支えて前を向いていられるのはこの働きのためです。
2)手足やボディの運動
 筋肉はわかりやすい手足やボディを動かすだけではありません。噛むあごや飲み込むノドの運動、目を動かす運動、笑い顔やえくぼを作る運動、息を吸ったりはいたりする運動など、多くの動きを筋肉が行っています。このため、脳梗塞で片側がマヒすると、片側の顔が歪むことがあります。笑えない話ですね。
3)体温の維持
 筋肉は収縮をするために、糖やでんぷん質を分解し、ATPという物質をつくります。このATPが分解されるとき線維状のタンパク質が曲がってタンパク繊維のスライドが起こります。ATPが分解すると、同時に熱を発生します。この熱は、熱の伝導体である血液に渡され、全身へ伝わりま

す。インフルエンザの時、ガタガタ震えた後、熱が出るのは、筋肉の細かい収縮によって熱が発生し、わずかの時間差の後、全身に伝わったためです。
4)血液やリンパ液のポンプとして
 血液を送り出す主なポンプは心臓です。しかし動脈から毛細血管へ血液が流れると細い血管ですから流速が急減し、静脈に達するまでにはよどんできます。筋肉が収縮することで、筋肉内によどんでいる血管内の血液を、絞り出すように静脈内へと押し戻します。末梢から中央の静脈へと一方通行の流れしかないリンパ管には、元々心臓のようなポンプはありません。これらも同様に筋肉の収縮で絞られ流れができます。
5)内臓の保護
 腹筋は体をくの字に曲げるだけが働きではありません。柔らかい胃腸や、外力で損傷しやすい肝臓などを包むようにしっかり守っています。同時に、内圧で胃腸が外に飛び出てしまうのも防いでいます。
6)関節の保護
 前ページの図では筋肉が一つしか描かれていませんが実際には両側そして、反対側からもと幾重もの筋肉で関節は覆われています。筋肉は関節を動かすだけでなく、関節に衝撃が加わったときにクッションの働きもしています。






よく聞く、筋・関節の病気

1)五十肩
 50歳を超えていて、肩に痛みと運動障害があり、明らかな原因がないものを五十肩と呼びます。ただ、原因が無くて起こる痛みは、考えられません。原因がないとは、レントゲンやMRIなどで調べても痛みの原因が特定できなかったという意味です。五十肩は一般に腕をある方向に上げようとすると痛みが誘発されます。もし、筋肉にMRIレ

ベルでは見えない、細かい小さな傷がついていたらどうでしょうか?筋肉が収縮するたびにその力が、筋肉の微小な傷口を裂く方向に働き、傷口は実際に広がって、その付近は痛みます。なお、ここで言う筋肉は、前図でお示しした筋肉とその延長である腱も含んでいます。
 五十肩の経過は一般に、痛みが出てしばらくは傷口

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