心と体を結ぶ自律神経

 神経には、次の3つがあります。
①運動神経:脳が手足の筋肉を随意に動かすための指令経路。
②感覚神経:痛み、冷たさや暑さ、味や音などの五感を脳へ伝える情報収集・伝達の経路。
③自律神経:体の様々な働きや、恒常性の維持(いい具合に体の調子を保つ)を、自動操縦で行う神経システムです。
 3つ目の
自律神経には、交感神経と副交感神経の2つがあります。これらの働きで、体の調子は自分の意志とあまり関係なく、自動操縦で整えられています。心の動きやストレスによって、自動操縦の回路に支障が出ると、様々な思わぬ症状が出てきてしまいます。この2つの神経は、体全体の方向性を正反対の方へ持っていく働きをしています。
A)交感神経---この神経が働くと、血圧が上がり、心拍数が増え、瞳が開いて息が早くなります。そして、代謝が活発になって汗をかき、胃腸の動きが止まって排尿しなくなります。心のテンションも高くなり、活発に活動できる心身の体制を作ります。

B)副交感神経---こちらの神経が作動すると、逆に血圧が下がり、心拍数が減り、瞳が閉じて呼吸がゆっくりします。代謝が落ちるので皮膚が乾燥し、胃腸の運動が活発になって、排尿や排便を促します。心の緊張がほぐれると、眠くなります。
 このように交感神経は、朝、目が覚めたとたんに活発になり、活動する体制を整えて臨戦態勢を築く神経です。逆に副交感神経は、体を休めたり、栄養を蓄え活動の準備をしておく、体のメンテナンスを仕切る神経といえます。
人の体は、自律神経の綱引きによって活動状態と活動準備状態を行き来しながらバランスをとっています。従って休むべき時に交感神経が活発になりすぎたり、活動する時に副交感神経がよけいなメンテを体が始めてしまうと、体のアンバランスをきたします。このアンバランスの引き金になるのが心のストレスで、結果として起こる体の不具合が心身症というわけです。そして、このアンバランスを仲介するのが自律神経なのです。






主な心身症

 心のストレスは必ずしも以下の病気の主因にとは限りません。しかし、これらは心との繋がりが深い疾患なので、心が体にどう作用する、見ておきましょう。
気管支ぜんそく
 主な原因はアレルギーによる気管支の炎症で、気管支を通る空気の出入りがしにくくなる病気です。ぜんそくを持つ人にストレスがかかると、その瞬間は心身が構えるため、交感神経が活発となり気道のとおりが良くなります。ところが、人間は緊張状態を長く続けることができないので、大きな緊張の反動として深い弛緩の波が押し寄せます。

このとき、普段以上に副交感神経が作動し、気管の内径が狭くなったり鼻汁や痰などの分泌物が増え、発作が起こります。
過換気症候群
 不安や緊張などで気が動転し、体が有事に備えるべく深い呼吸を繰り返します。すると、吐く息から炭酸ガス(二酸化炭素)が体外へ出ていき、体がアルカリに傾きます。その結果、脳へ行く血管が一時的に収縮し、気が遠のきます。このため、益々不安が増し交感神経が興奮して動悸を覚え呼吸数が一層早まり、悪循環に陥ります。ストレス

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