リスクに応じた脂質治療目標

 脂質異常症は、冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症(足の血管動脈硬化)の原因です。動脈硬化は、脂質異常以外にも、高血圧糖尿病が同様に大きな原因となっています。下線の動脈硬化の3大原因をバラバラに考えるのではなく、他の2つや過去の動脈硬化関連疾患の病歴を配慮の上、脂質異常を持つ人それぞれに応じたコレステロール値(LDL-CやHDL-C)の治療目標値を設定したのが下の表の、脂質管理目標値です。表には、年齢、喫煙の有無、冠動脈疾患の家族歴などのリスクも含まれています。
 表をご覧になると、いくつか気づく点があります。まずは、カテゴリーの下に該当する動脈硬化のリスクが多い人ほど、治療で達成すべきとされるLDL-Cの目標値が低くなっています。つまり、
危ない人ほど、徹底的に悪玉コレステロールを下げていこうというわけです。リスクの少ない人は、食生活や運動の奨励など生活習慣を改善した上で、目標値を達成できない場合は薬を服用していきます。(I〜III)また、いったん冠動脈疾患に罹ったリスクの極めて高い人は生活習慣の改善と同時進行で即座に薬物治療を開始します。

 これに対してHDL-CやTGは、単純な目標値しかありません。@HDL-C(善玉)は治療薬によって簡単に増やすことが難しく、治療目標値を設定できるほど明確な臨床研究が行えなかったこと。ATGは食事の影響を強く受け、夕食後、朝まで何も食べないことを確実に実行できなければ値が大きく狂うこと。BTGはコレステロールほど動脈硬化に及ぼす影響が少ないことが、単純な目標と関係しています。
 なお、この目標値はあくまでも脂質側の視点から見たもので、コレステロールだけ下げれば事足りるわけではありません。同時に高血圧や糖尿病を持つ方はそちらも徹底的に治療すべきなのは言うまでも無いことです。しかも、血圧などはリスクの高い人ほどできるだけ低くすべきとされていますので、少し下がっただけで満足するのではなく、診察室での血圧で130/85mmHg未満、家庭での血圧で125/75mmHg未満にすべきとされています。
 これら全てをクリアするのは容易ではなく、様々な薬を組み合わせてコレステロール、血圧、血糖値(HgA1c)下げれるだけ下げていこうというのが、動脈硬化関連の学会が推奨する治療法であり、現在のトレンドです。






 脂質管理と同時に、禁煙や、高血圧糖尿病の治療など、他の危険因子を是正する必要があります。
LDL-C以外の主要危険因子*
 加齢(男性≧45歳 女性≧55歳、高血圧、糖尿病(耐糖能異常を含む)、喫煙、冠動脈疾患の家族歴、低HDL血症<40mg/dl

糖尿病、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症の合併はカテゴリーIII(高リスクとする)
 <動脈硬化性疾患予防ガイドライン>から

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