鎌倉市大船 山口内科 すこやか生活13巻5号

すこやか生活

定年と健康

 人生90年の時代が近づいています。60歳の定年も、平均余命の上昇、人々の健康の増進、そして年金支払いの先延ばしから65歳へ延長する方向で社会は動き出しています。雇用事情の悪化から、実際に正社員としての定年の延長が普及するかどうかは不透明ですが、定年後を想定した人生設計をしておくべきなのは言うまでもありません。かく言う私も皆さんと同様です。60才といえどもまだ2/3にすぎません。
 どの会社や組織でも、一握りの人だけが経営者として残り、ほとんどの人は50才過ぎから、徐々に閑職へと退きます。それまで第一線で仕事をしていた人が、急に責任が少なく荷が軽い仕事をさせられると、一時的な喪失感に襲われます。こころの問題とは逆に、仕事内容は決済業務からルーチンワークとかわり、退屈さを覚えることもあるでしょう。 

 そしていよいよ定年になると、いままで自分の大部分をしめていた会社人としての生活から、いわゆる「毎日が日曜日」に、なります。生活の場が会社から自宅になると、人間関係は社内や取引先の人から、家族や近隣の人々に変わり急に世間が狭くなります。このように、自分の心の中、生活環境、人間関係などの生活の根本がガラリと変わる大変化は、生涯においても就職時くらいしかありません。若く柔軟で気力、体力に満ちている時は、多少のことがあっても適応できます。しかし、60才を過ぎてからの大変化は少々こたえます。心や体の変調の原因にもなります。今月は誰でも一度は来る定年前後の健康について考えてみましょう。 






定年後の生活変化

運動
 通勤などで都心へ通っている方が万歩計をつけると、たいがい1日5千歩〜1万歩程度、仕事関連で歩いています。一口に1万歩といっても、歩く速度や体重によって距離や消費カロリーが異なり、一概に言えませんが、60kgの男性が6〜7km歩いて消費するカロリーは300Kcalほどです。これは、同体重の人の日常生活に必要な熱量のおよそ1/6、1食の半分に相当します。これだけの熱量がもし消費されずに体内に溜まるとしたら? 定年後半年を待たずして、5kg太る勘定です。そこで、出社の回数が減ったり、社外へ出る営業職から内勤に変わりめっきり運動量が減った場合は、意識的に歩行などの有酸素運動

を増やし、食事の量を加減しましょう。さもなければあっという間に昨年のズボンが入らなくなってしまいます。
食生活
 運動のところでも述べたように、基本的に運動量が減る場合が多いので、少なめな食事を心がけましょう。しかし、一日中家でゴロゴロしていたり、会社に行っても仕事が忙しくないと、ついついおやつに手が伸びがちです。また、1日中、夫が家にいると、奥さんもお茶やお菓子を出したり果物を切ったりと、サービス過剰になるので気をなければなりません。
 食べ物の内容的には、社食や外食が減るのでタンパク質や揚げ物の多い食事からヘルシーな家庭食に変わり、問題

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