機能性ディスペプシア(FD)

 胃カメラなどで明らかな胃・十二指腸の異常が無く、胃もたれやむかつき、みぞおちの痛みがある状態を機能性ディスペプシアと呼びます。潰瘍や胃炎など一般的な病名に当てはまらないため、"わからないからこれと診断しておけ"的な、病名のくず籠のようなものです。
 原因は胃酸過多、消化管の運動機能異常、内臓の神経過敏、ピロリ菌、精神的なストレスなど様々なものが想定されていますが、病気自体が一つのものとは限らずどれも主因たりえません。
 主な症状は、みぞおちの痛みや灼熱感、つらいと感じるほどの胃もたれ、お腹の張った感じなどです。食べてものが胃にたまって消化しないと表現する方もいます。
 原因がわからないのに治療でもありませんが、経験的に最も効くのが胃酸分泌を抑える
PPIH2ブロッカーです。治療の結果からFDの多くの原因に胃酸過多が絡んでいると思いますが、何せ検査をしても明らかな原因がわからないのでハッキリ言えません。私見ですが、PPIなどが効くFD

は、NERDのごく食道下端だけに症状が出ているものの可能性が高いのではと思っています。つまり逆流が中部食道(胸)まで達せず、胸やけは感じず、食道・胃接合部のみの不快感として感じているということです。これなら、みぞおちの痛みや灼熱感も説明できるからです。
 その他、むかつきを抑える吐き気止め、胃腸の運動を順方向(口から肛門側)へ促進させる薬(ガスモチンやガナトン)なども有効とされますが、これらは
GERDNERDでも効果が期待できる薬です。
 精神的なストレスも症状を強めている可能性があるため、安定剤や軽い抗うつ剤が効くこともあります。前者は、デパスやソラナックス、後者はドグマチールやパキシルなどです。
 これらはどれも、
PPIH2ブロッカーの効果が不良な時に併用されるのが一般的です。これらのことも、GERDNERDとのオーバーラップが疑われるゆえんです。






過敏性腸症候群(IBS)

 腹痛や下痢・便秘、腹部の不快感がつづき、腸炎やガンなどがない腸の消化管機能異常です。軽い人を含め、成人人口の10〜20%とも言われ、消化器内科を受診する人の30%にも及びます。お腹の具合が悪くて会社や学校を休む原因で一番多いため、社会的にも問題になっています。以下のRome IIIの基準に該

当する方はIBSの可能性があります。お腹の調子が長きにわたってすぐれない場合は休んでばかりいないで医師に相談してください。なお、日本は3ヶ月も待って医療機関を受診する人は少ないため、下記診断基準の、お腹がすぐれない期間は、2週間または1ヶ月で十分です。

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