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心房細動と脳梗塞

 心室だけではありません。心房も不規則な異常興奮のためリズミカルな動きができず、ピクピクしたけいれんが続きます。すると心房の隅(左心耳)で血液の流れがよどむ部分ができます。血液は流れていてこそ、水同様サラサラしていますが、いったん滞るとドロドロしてすぐ固まります。出血した血液がネバネバして固まり、かさぶたを作るのと同じです。心臓内や血管内でできるこの"かさぶたのような物"が血栓です。かさぶたは血管が破れたとき、その外側に穴をふさいで出血を止める目的でできます。血栓は、かさぶた様の塊が間違って血管内にできてしまったものです。血栓はできた場所でおとなしく鎮座していれば大して問題はありません。しかし、血管壁からはがれたり千切れて血流に乗り、体の先々へ飛ぶことがあります。そして血管の先端でつまり、そこから先に血液が流れるのをせき止めます。血栓がつまり、臓器・細胞が酸素欠乏で死んでしまうこのできごとを、○○梗塞と呼びます。肝梗塞、脾梗塞、そして心筋梗塞に「脳梗塞」などです。心房細動はこのような脳梗塞などの原因として最も多い基礎疾患の一つです。脳梗塞になると、様々な体の動きがマヒしたり意識が薄れるなど危険なため、心房細動の治療や、血栓形成防止が必要なのです。

 心房は大静脈や肺静脈から心臓にもどった血液を溜め、すぐに心室へと送ります。心室は十分な血液が溜まったらタイミング良く大動脈や肺動脈へ送り出します。この静脈→心房→心室→動脈という血液の流れは、ドックン、ドックン、ドックンという規則正しい心臓のリズムによって、効率的に維持されています。脈が触れるのはたっぷり心臓に溜まった血液が、順次手足へ送られてきた証拠です。
 心房細動は、心房の中をいくつかの電気的な興奮の波が駆けめぐり、心房が無秩序に興奮させられている状態です。この異常興奮は、バラバラに心室に伝わるため心室もまったく不規則に収縮します。ある時は一つ前の心拍の直後で、まだ送り出す血液が心室に十分溜まる前に拍動がおこり、またある時は、電気的興奮の伝導が遅れ、めいっぱい血液が心室に溜まったときに心室が収縮します。
 心房細動により心臓の拍動がまったく不規則になると、通常の7割くらいしか血液が全身に流れません。この状態のまま、無理に十分な血液を体中に流そうとすると、心臓は
4割余計に働かなければならず、大きな負担を抱えます。
 0.7 (7割)x  1.42(+4割) = 0.994 ≒ 1.0
このため、心房細動になると心筋に無理がたたり、心不全を起こします。






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