おもな抗生物質

(1)βラクタム系
 ペニシリン系と、セフェム系の総称です。カルバペネム系やモノバクタム系もこの仲間です。細菌の細胞膜の外側にある細胞壁が作られるとき、その材料に紛れ込み壁が築かれるのを邪魔します。これにより1つの細胞が2つに上手に分裂することができず、細菌は死んでしまいます。細胞壁という人が持っていない部分をターゲットにする薬なので、細菌と人の分別がハッキリでき、極めて副作用の少ない薬です。なお、細胞膜を持たない細菌や微生物には効果がありません。
 長らく使っていると細菌もこのβラクタムを分解する酵素が作れるように進化し耐性菌化します。時々耳にするMRSA(メチシリンというペニシリンに耐性のある黄色ブドウ球菌)などが耐性菌の代表です。
 人体に及ぼす悪影響は少ないというものの、希ではありますがアレルギー反応が出ることもあります。じんま疹やぜん息です。また、抗生物質が効きすぎると、腸内や膣内のバランスを保つ善玉菌が死んで下痢をしたり、カンジダ性膣炎を起こすこともあります。
A)ペニシリン系
 元祖抗生物質の1つです。第二次世界大戦の前に開発され、連合国の負傷兵を化膿性の感染症から救いました。長らく使われてきたので耐性菌が多いため、古いものは効きが悪くなっ

ています。現在ではアモキサシリンなど、元祖ペニシリンから進歩したものが、梅毒、溶連菌感染症、ピロリ菌の治療に用いられます。
 主に皮膚や、扁桃腺など咽の感染症などからだの表面につく細菌に効力を発揮します。
B)セフェム系
 ペニシリンと似た構造を持つので、細菌に対する作用も同様です。ペニシリンに比べ、腸の中の菌など、表面より少し深いところに住む菌をよく殺します。大腸菌やインフルエンザ桿菌などが主なターゲットです。10年ぐらい前まで盛んに開発されていましたが、やたらに使われたのでMRSAその他の耐性菌が生まれ、近年は一服です。フロモックス、セフゾン、メイアクト、ロセフィンなどを私も使っています。上気道炎、肺炎、膀胱炎に腎盂腎炎、胆のう炎、憩室炎など多くの細菌感染症で使われます。
(2)キノロン系
 今となっては古典的な膀胱炎用の市販薬、ナリジクス酸が元祖です。近年ではレボフロキサシン(クラビッド)、数年前にマスコミをにぎわした炭疽菌に効くシプロキサシンやガチフロなどが有名です。
 細菌が分裂増殖するときDNAが複製されますが、その過程に必要な酵素を邪魔します。
 比較的副作用が少なく、

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