カゼを語源から考える

感冒
 感じる(強い刺激を受ける)ことによって、健康を冒す(おかす)ことと読めます。ここで、強い刺激といっても何かわかりにくいと思いますが、一般に感冒の場合はウイルス感染などによって健康を冒す状態と考えられています。流行性感冒(インフルエンザ)などが、この病名のイメージキャラクターです。ところで、"感"を強い刺激ならどんなことでもよいと拡大解釈をしますと、強い日差しで健康を害する熱中症や日焼けなどもこの範疇に入りそうです。また、花粉などのアレルギーの刺激によって健康を害するアレルギー性鼻炎や喘息なども含まれて良さそうです。事実、これらをカゼと間違えて受診される方も結構います。このあたりはどこまで『強い刺激を感じることで健康を害した』といえるか難しいところですが、感染によって上気道症状を起こし健康を冒すものを感冒と呼ぶべきなのでしょう。なお、お腹をこわすカゼなども感染症による腸炎なのでこの範疇に入れてもよいでしょう。
風邪
 風が邪(よこしま)なことを働くことと読めます。これも風が媒介して感染症が広がるイメージです。1ページ目の空気感染、飛沫感染がそれに当たります。空気や風が問題なのですから、感染性の腸炎は空気を介さないのでイメージが合いません。
 さて、風が邪なことをするもう一つ有名な病気があります。それは花粉症と呼ばれるアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎です。これらは副鼻腔炎などの合併症を起こさない限り高熱は出ません。しかし、くしゃみ、鼻水、鼻づまりに

加え、セキやノドの痛み頭痛など、熱以外のカゼ症状がほとんど出ます。それ故、鼻カゼとも呼ばれています。この鼻カゼですが、皆さんが考えているよりずっと頻度が高く、風邪だと思って来院する方で、大した熱が出ていない方の大半といって良いくらいです。そこで、"風邪"と言った場合は、感染症と鼻かぜ(アレルギー性鼻炎)を含めたモノと言った理解でよいと思います。
 ここで1つ問題があります。
風邪はうつるものと言った迷信です。確かにインフルエンザのような感染症はうつります。しかしカゼの大部分を占める鼻カゼはうつりません。ただ、アレルギー体質は遺伝するので、同じ季節に親子で、兄弟でほぼ同時にまたは、数日の時間差で順に鼻カゼになることは大いにあり得ます。よく"人にうつされた。"と言っている鼻カゼの方がいますが、何のことはない同じ季節の鼻カゼに時間差でなっただけのこと。"感染症としての風邪"と"鼻カゼ"をきちんと見極めることができれば、うつる風邪かうつらない風邪か判断でき、人にうつしてしまうという余計な心配も減ります。
 最後に鼻カゼだから心配ないという勘違いをしている方に一言。うつる風邪は1週間ほどで治りますが、鼻カゼは治るのに月単位の日数がかかります。また、副鼻腔炎や喘息・気管支炎などの合併症が多いのも鼻カゼの特徴です。以上より、
感染性の風邪はキッチリと休み、周りにうつさないことが大切です。鼻カゼは仕事や学校を休む必要はありませんが、軽く考えずこじらせないように治療して、余病を避けることが肝要です。






カゼ症候群 | カゼを語源から考える
|
カゼと大病を間違えないために | カゼのウソ、ホント