過敏性腸症候群(IBS)

 ストレス社会である現代の代表的な腸疾患が過敏性腸症候群です。"朝、排便を済ませているのに学校へ行く途中駅でトイレに行き、学校へ着いてからも下痢をした。週末は良いのだが月曜の朝になると決まってお腹がゴロゴロして下痢をする。下痢と便秘を繰り返し、大腸内視鏡で調べても異常がなく気のせいですよと言われたが症状が取れない。"などという方がこれです。以前は、いろいろ検査をしたのに他の病名に当てはまらない腸の不具合を、まとめてゴミ箱に放り込むような診断をしていました。近年増加傾向で世界的にも注目されているため、新しい診断基準が出てきました。

6ヶ月以上前から症状があり、過去3ヶ月間に月に3日以上にわたって腹痛や腹部不快感が繰り返し起こり、以下の3つのうち2項目を満たすものをIBSと診断します。(ROME III)
1.排便により症状が軽減する
2.発症時に便の頻度に変化がある
3.発症時に便の形状(外観)に変化がある
 便秘が主な症状のもの、下痢が主なもの、便秘と下痢が混じるもの、そしてどれにも当てはまらないものもあります。該当する方は成人の15%程度にもなります。古来より腹がたつ、腹を決めるなど、腹は精神的な出来事に重ね合わされて語られてきました。昔の人々も腸の健康と精神は密接に関係していると感づいていたのでしょう。

 中心的な症状は下痢です。人も動物もストレスをかけると腸の動きが活発になります。そして、ストレスが止んだ

後もしばらく腸は動き続けます。腸が動くことを英語でbowel movementと書きますが、これは英俗語で"うんち"という意味です。大便は腸の動きで押し出されると言うニュアンスです。この病気に当てはまりそうな方は、まず、ご自分のライフスタイルを見直してください。残業を減らしたり、壊れかけている人間関係は修復の努力をしましょう。スポーツや趣味なども積極的に行い、ストレスを発散させるのも良いでしょう。
治療
1) 腸の動きを鎮める抗コリン剤
 腸はアセチルコリンという副交感神経の末端から出てくる物質によって収縮運動します。この物質の働きを抑えれば症状が取れます。代表的な薬は、ブスコパン、チアトンなど。その他セレキノンなど腸運動を調整する薬も使われます。
2) 安定剤と抗うつ剤---神経をぼかす
 安定剤は眠気が出るので比較的軽いものを少量から使ってみます。デパス、ソラナックスなどです。安定剤はそれ自体便秘がちになるので、下痢型のタイプには良い適応です。古くからあるトリプタノールなど、三環系抗うつ剤もよく使われます。うつ病には不十分なくらい少量でもIBSでは効くこともあります。これは三環系抗うつ剤の持つ抗コリン作用が有効だからです。
3) 下痢、便秘の薬など一般薬
 ロペミンなどの下痢止め、ビオフェルミンなどの整腸剤も使われます。便が硬い場合は酸化マグネシウムなどの下剤も良い適応です。下痢止めはあまり有効でないことが多い印象です。






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