失神と立ちくらみ(脳循環不全)
血液は水と同様、高きところから低きところへ流れます。流れる源は心臓で、流れる先は手足や内臓、脳などです。四つ足動物の脳は心臓とあまり変わらない高さにあるので問題ありませんが、起立している人の脳は心臓より上にあり、他の動物より血液が流れにくく不利な状況にあります。このため、血管を取り巻く神経などによって、うまく脳の血圧が維持され、末端の脳細胞まで栄養や酸素が届くようになっているのが人間の脳です。しかし、ひ
とたびこのシステムの働きが狂い、脳に血液が流れなくなると、目の前が真っ暗になって失神します。"フーッと気が遠くなって意識が無くなった。""立ち上がったら頭がクラクラし思わずしゃがみ込んでしまった。"などが、このタイプの典型的な症状です。この循環不全によるめまいはポンプである心臓の不具合、血液が流れていく血管の血圧調節をしている自律神経の失調、そして流れていく血液自体の減少(貧血)などが原因です。
A)心源性のめまい 重症な不整脈や、心拍数(脈拍数)が減る房室ブロック、心筋梗塞によるポンプ失調では心臓から充分な血液が脳に流れていきません。このため、脳が循環不全になり、めまいや失神を起こします。また、弁膜症などでは、
運動量が増えて、心臓がその負担に耐えられなくなったときにめまいを起こします。これらは、めまいの治療をするのではなく、問題となる心臓の病気の治療をすることでめまいや失神の予防をします。
B)自律神経からくるめまい 自律神経は血圧を上げる交感神経、下げる副交感神経があり、その綱引きでバランスの取れた血圧を保っています。このバランスがうまく取れず血圧が下がってしまうと立ちくらみに代表されるめまいが起こります。起立性低血圧、入浴中ののぼせ、食事、排尿や排便に伴う副交感神経の働き過ぎなどが有名です。これらはおおむね大きな問題は起こりませんが、症状が強
い場合には、交感神経を活発にするリズミックなどの薬を使うこともあります。パーキンソン症候群や糖尿病性神経症の症状の一部としてこのめまいがすることもありますが、この場合は原因となる疾患の治療が本筋です。血圧の治療薬が効きすぎるなど、薬の影響でめまいがすることもあります。新しい薬を飲み始めてこのような症状が出てきたら早めにお知らせ下さい。
C)貧血からくるめまい 体を循環する血液の量が減ったり薄くなると、脳に運ばれる酸素が不足するため、立ちくらみなどのめまいを起こします。女性に多い月経過多や子宮筋腫、そして胃潰瘍や癌など消化管からの出血などが代表です。その他様々な原因の貧血がめまいの原因になりま
す。原因疾患を治療することと、増血剤の服用など貧血の治療がめまいに有効です。その他、下痢や嘔吐、利尿剤の効きすぎによる脱水症、熱中症なども同様なめまいを起こします。この場合、水分や塩分の補給が治療になります。