逆流性食道炎

 胸焼けは胃が悪くて起こると考えられてきましたが、実際は心臓の裏にある食道の痛みを感じている場合がほとんどです。粘膜の凹凸を白と黒の影で映し出すバリウム検査の時代には発見できなかった食道炎が内視鏡(胃カメラ)ではハッキリと確認できるため、胸焼けの本体は食道炎であることが知られてきました。 胸が痛いと、皆さん心臓病を心配され、やれ心電図だ、心臓カテーテルだと猛進しますが、一説によると食道炎を持っている日本人は17%にも達しているため、胸痛は心臓病でないことの方が多いと言って良いでしょう。男性では30〜50歳代に多く、女性では60歳以上で著明に増加しています。食道炎は一般に胃液が食道に逆流して、食道の粘膜を傷つけて起こります。ひどい方は潰瘍を繰り返して食道下部が狭くなり、食べ物の通過が悪くなることもあります。逆流の本体は胃液(塩酸)です。食道は胃に比べ、物理的刺激には強いものの酸には弱いためひとたまりもありません。また、胃を手術で取っている方は、十二指腸のタンパク分解酵素が多くアルカリ性の消化液によって食道炎を起こしている場合もあります(図B)。逆流の原因は食道と胃の境の噴門括約筋が緩くなっていたり、食道裂孔が開いてしまい胃が横隔膜の上へ滑りあがっているなど境界がゆる

ゆるになっていることがほとんどです(図A)。こんな方が食べ過ぎたり、しゃがんで胃が圧迫されると、チューブを絞ると出てくるマヨネーズのごとく胃液がこみ上げて、食道を荒らします。また、緩くなっている方は横になると胃の中のものが食道に上がってきますので、食事をしたあとすぐ寝るのは避けましょう。太り過ぎて、自分のお腹の脂肪で胃を圧迫したり、きついベルトやボディスーツ,コルセットなどで締め上げるのも逆流の原因になります。
 A、Bどちらも構造的な問題なので、根本治療は手術による構造改革です。しかし、胸焼けぐらいで手術をしていたらきりがありません。一般的には図Aの様に上がってくる胃酸が原因なら、胃酸の分泌を抑えるタケプロンやオメプラールなどPPIと呼ばれる薬が特効薬として使われます。症状が軽い場合は、ザンタック、プロテカジンなどH2ブロッカーと呼ばれる薬も有効です。どちらも胃、十二指腸潰瘍の治療薬として知られています。図Bの場合は胃薬が効かないのでやっかいです。タンパク分解酵素(トリプシンなど)の働きを中和するフォイパンが効果的なことがあるため、よく使われています。AB共に消化管の順方向の動きを促すガスモチンなどが効くこともあります。






A)食道裂孔ヘルニアに伴う食道炎
  胃酸が逆流している

B)
胃を取ったあとの食道炎
  アルカリ性でトリプシンなど    
  のタンパク分解酵素が逆流し
  ている

マヨネーズ同様お腹を圧迫するとピュッと出てしまいます

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