すこやかな暮らしを応援します!

ページ1

鎌倉市大船 山口内科 すこやか生活第3巻8号

すこやか生活

免疫の位置づけ

 免疫とは、"疫(病)を免れる"と書き、そのまま病気を免れる体の仕組みと考えられています。病気の歴史は、外敵つまりペストや結核、天然痘などの微生物との戦いでした。従って、ジェンナーが種痘を開発し、パスツールが狂犬病のワクチンを始めた頃は、まさに医学は未知の細菌やウイルスといった微生物との戦いの時代でした。これら微生物の発見と時を同じくして、一度これらの病気にかかると二度とかからないということがわかり、それなら毒性の低い微生物に軽く感染し、免疫という抵抗力をつけようという考え方が始まりました。まだ、ほんの百数十年前のことです。それ以後、免疫学の発達はめざましく、今でも予防接種はその大きな成果ですが、ほんの一部の分野

になりました。微生物によらない病気についても免疫学は広く応用され、研究されています。アレルギー性疾患、膠原病などの自己免疫性疾患だけではなく、溶血、腎炎などの腎臓病、バセドウ病・橋本病などの甲状腺疾患、ウイルス性肝炎、心臓弁膜症など様々な病気の主役が免疫反応であるとわかりました。一部の糖尿病や男性不妊の病因として、また薬の副作用にも関係しています。移植やガン治療にも応用されています。こうして免疫は、単に外敵から体を守っているだけでなく、脳神経系やホルモンなどと一緒にネットワークを作りながら体の調子を整える仕組みと位置づけられるようになりました。






免疫の仕組み

 免疫の仕組みは次のようなステップで行われます。細胞名は3巻5号も参照下さい。

1)自分と他人を分ける(自己認識)
 攻撃するにはまず、外敵と自分を峻別しなくてはなりません。もちろん内部にもガンのような異物が発生します。このような異物を自分自身ではなく外敵と認識する必要があります。マクロファージ(貪食〈どんしょく〉細胞と呼ばれ外敵を食べて処理する細胞)や好中球などが認識した異物をリンパ球に伝えて始まります。

2)免疫力を発揮する(免疫応答)
 自己でないものが免疫ネットワークに認識されると、様々な攻撃が起こります。まずは抗体産生です。Ig-M、Ig-
Gなどの免疫グロブリンがBリ

ンパ球由来の形質細胞から生産されます。これが抗原と呼ばれる外敵のタンパク質と結合し、外敵を壊したり、外敵がマクロファージなどに食べられやすくなります。これら抗体が関与する免疫を液性免疫と呼びます。また、抗体の関与しない免疫応答を細胞性免疫と呼び、Tリンパ球に活性化されたマクロファージが生産するTNF-αやインターロイキン(IL)、細胞障害性Tリンパ球やNK細胞のパーフォリン、グランザイムなどといった物質が武器として使われます。

3)免疫のバランスをとる(免疫制御)
 免疫応答の量が過剰にならないように、質が異常にならないように見張る仕組みが免疫制御です。免疫制御は、リンパ球による食細胞活性のコント

(2 ページに続く)

免疫の位置づけ・仕組み | 予防接種の考え方 | 免疫とアレルギー |
免疫やアレルギー治療の基本戦略