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鎌倉市大船 山口内科 

漢方の診察法と考え方

 我々、現代の医師は、解剖学、生理学、生化学、病理学、微生物学など、ルネサンス以降の科学の進歩を取り入れた学問を基礎に成り立った西洋医学を学び、その果実を毎日の医療に生かしています。漢方(東洋医学)も進歩しており、一部西洋医学の成果を取り入れていると思いますが、基本的には、数百年から二千年前に書かれた書物を元に成り立っています。これらは、中国の世界観、陰陽五行説を人体に当てはめたことから始まったようです。
 まずは、四診(望・聞・問・切)と呼ばれる診察法、各々すなわち、視診と舌診・聴診・問診・脈診と腹診(お腹の視診と触診)を行います。わかりやすく言うと、皮膚や顔色を見て、舌の状態を確認し、患者さんの発する音を聞き、呼気や排泄物の臭いを嗅いで、症状や食事、便通のことを問い、証と呼ばれる患者さんの状態を把握・診断します。
 証とは、陰陽、虚実、寒熱、表裏、気血水などをもとにした体の状況で、これに基づき、証にあった漢方薬などの治療法が決定されます。ここ

で、陰とは体が実際には温かいのに寒く感じ夏でも靴下が放せないような人で、陽はいつも暑い暑いと言っていて冬でもアイスクリームを食べるような人です。虚とは虚弱体質で、体力・気力抵抗力が低下しており、病気になりやすい人です。いつも疲れやすく食欲不振、胃もたれ腹痛、下痢などの胃腸症状を伴っています。このような人は、病気になっても体の闘病反応があまり強くありません。実とは体力・気力が満ちていて胃腸が強く、何を食べても平気な人です。病気になったときには強い闘病反応が起こっている状態を指し、インフルエンザの時に高熱が出て、節々が痛むような反応も一時的に実の証が出ていると考えられます。皮膚など体の表面が表、内臓など見えないところが裏、寒熱はそのままで、気は人の中を巡る仮想上のエネルギー、血は血液、水は尿など血液以外の液体成分を指します。
 こうして一覧すると、科学的とは言えませんが経験に基づいた体系だった考え方と思われたのではないでしょうか。

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