①クシャミ、②鼻水、③鼻づまりの3症状が花粉症(アレルギー性鼻炎)の典型症状です。鼻水は無色透明で、水のようにサラサラしています。花粉症の初期、または安定している時期はこれで良いのですが、様々な状況の変化でこじれてしまいます。こじれるとは、単純な症状では済まず、他の病気を併発することです。こじれる最も大きな原因は、ズバリ、鼻づまりです。鼻粘膜が腫れてつまると、次の問題が起こります。
1)後鼻漏が増える:後鼻漏とは鼻水が前方に出るのではなく、鼻の奥からノドへ落ちるものです。
2)副鼻腔や耳管への交通路がふさがる:前者は副鼻腔炎、後者は中耳炎につながります。
3)ぜん息、気管支炎、肺炎に進む:上気道の鼻を通る空気の行き先は、気管支から肺です。後鼻漏もここへ落ちます。
4)腹部の症状が出る:ピンと来ないと思いますが、鼻がつまると口呼吸となり食事時などに口から吸った空気を食道から胃へ飲み込み、腹が張ってきます。  
1)諸悪の根元、後鼻漏:炎症物質を含んだ後鼻漏は、ノドの突き当たりに黄色いネバネバとして観察できます。これが付着しているとノドが焼けるように痛みます。実は、カゼをひいた時のノド痛の原因のほとんどが付着した後鼻漏です。この後鼻漏は、ノド以下の様々な場所で炎症を起こします。
2)アレルギーの時期に入ると俄然増える副鼻腔炎と中耳炎:目の奥やほほの痛み、黄、緑の鼻汁、発熱は副鼻腔炎のサインです。また、耳が痛くなるのは中耳炎の兆候です。このような場合は速やかに原因となる鼻粘膜の腫れを解消し、副鼻腔や中耳の炎症を治めなければなりません。また、

副鼻腔炎や中耳炎は頭蓋内の炎症ですので悪化すると髄膜炎に進む場合があり、特に小さいお子さんでは注意を要します。
3)ぜん息はアレルゲンを気管支に吸い込んで起こす炎症が原因と考えれています。しかし、鼻炎の治療をきっちり行うとぜん息が出ないことが多く、後鼻漏が原因となっている可能性が高いようです。つまり、アレルギー反応の首座は鼻で、結果的に気管に炎症が波及してぜん息が起きているわけです。同様に、この時期に増えてくるのが肺炎です。肺炎球菌やインフルエンザ菌などの細菌性肺炎は、細菌が肺の奥へ入って起こす炎症です。これらの菌は口や鼻の常在菌なので、いつでも入ることはできますが、健常な人は肺炎を起こしません。しかしカゼをこじらすと肺炎になります。この仕組みは次のようなものです。ノドへ垂れる肺炎球菌などの細菌を含む後鼻漏を吸い込み、これを咳で上手に出すことができないと、肺の奥にくっつき、そこで細菌が増殖し、肺炎に進むというものです。この時期に肺炎になった人の頭のレントゲンを撮影すると、副鼻腔炎を合併している人がとても多いのに驚きます。
4)口呼吸が原因で空気を飲み込む:おなかが張って苦しい、食欲が出ない、ゲップが多く胸焼けが出る(逆流性食道炎)、おならが良く出るなどの症状を訴える方が増えるのもこの時期です。小さなお子さんも同様で、お腹がポンポンに張って、打診すると太鼓のようにポコポコ鳴っている子をよく見かけます。時々苦しいので腸の検査をして欲しいと言われることもあります。こんな場合は、早急に鼻閉を解消すると、すぐお腹の張りが取れるようです。

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