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肺胞性肺炎は、細菌感染が原因と書きました。なので、細菌を肺まで吸い込んで肺炎を起こすと考えがちです。確かに、マイコプラズマやクラミジアを吸い込んで起こすオウム病などは、感染者のセキによる飛沫や空中に浮遊する病原体、粉状の鳥の糞などを肺へ吸入して発症します。なので他からうつるイメージで結構ですが、肺胞性肺炎は"うつる肺炎ではありません"。それでは、いったいどうやって細菌感染がおこるのでしょうか? 一般に市中肺炎と呼ばれる肺炎は、肺炎球菌やインフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌などが原因となる細菌です。これらは、"常在菌"と呼ばれ、鼻腔やノド、口の中に住んでおり、普段はおとなしくなりを潜めています。この常在菌が肺炎を起こすのですから、これらの菌を何らかの形で肺へ吸い込まなければなりません。その吸い込む形式は以下の2つが主です。 後鼻漏: 鼻汁がノドの方へ落ちるものを後鼻漏と呼びます。アレルギー性鼻炎など、細菌感染が伴わないものは、透明でサラサラと滑らかな鼻がノドに垂れます。副鼻腔炎など鼻腔周辺に炎症があると、後鼻漏は黄色や緑色になります。また、粘りけも増すため、ノドにへばり付きなかなか切れません。炎症が強いとノドの粘膜を荒らすのでノドの痛みとして感じます。この膿性の後鼻漏には、前述の細菌や、それを退治に動員された好中球などの白血球が含まれています。ノドに落ちた後鼻漏は基本的に食道から胃へと飲み込まれます。しかし、一部は気管方面に吸い込まれてしまうことがあります。後鼻漏を気管に吸い込むと、セキをし
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てはき出そうとします。これがむせです。夜にセキが出やすいのは夜間は後鼻漏が増える上に、眠りにつくと意識が無くなるので、飲み込むことができず、誤って吸い込む機会が増えるからです。これが夜間セキが多くなる理由で、ぜん息の方も同じような仕組みで夜間セキが出たり発作が起こります。 さて、この粘りけのあって菌を含む後鼻漏が気管支の先へ入り込み、くっついて出てこなかったらどうなるでしょうか?その場で細菌が増殖し、肺胞性肺炎になることは避けられません。「風邪をこじらせて肺炎になる」とは、鼻カゼ(アレルギー性鼻炎)をこじらせて、副鼻腔炎になり、吸い込んで肺胞性肺炎になると言う意味です。 誤嚥: 食べ物を食道へ飲み込めず、誤って気管へ吸い込んでしまうことを誤嚥と呼びます。高齢者で、脳梗塞や脳出血などを起こし、ノドの筋肉にマヒが起きている方によく見られます。食事をするときによくむせる(誤嚥する)方は要注意です。唾液に少し消化された食物は、かゆ状になって粘りけを増すので、間違って吸い込むと気管支にへばり付きます。マヒのある方は誤嚥物をセキで出す力が弱いため、一旦吸い込んでしまうと上手に出せず肺炎になりやすいのです。食べ物と一緒に吸い込む菌は、常在菌なので、後鼻漏による肺炎と似たり寄ったりです。間違って吸い込んでしまったら、背中を繰り返し叩くタッピングをすると、気管支にへばり付いた食物が叩く振動で剥がれて出しやすくなります。 院内感染・日和見感染: これは病院内などで、MRSA(メチシリン耐性ブドウ球菌)や緑膿菌等が起炎菌となる場合です。菌交代現象で、これらの菌が常在菌となって、後鼻漏や誤嚥を起こすことで発症する肺胞性肺炎です。
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