肺胞性肺炎と間質性肺炎

 A図は、気管支の先端にある肺胞の、正常な状態の模式図です。肺胞は毛細血管に取り囲まれており、全身から肺へ戻った血液は肺胞を通して酸素と二酸化炭素のガス交換を行っています。すなわち、吸った酸素は肺胞の壁を通して毛細血管に入り、全身から肺へ戻ってきた二酸化炭素は毛細血管から肺胞壁を通して、肺胞にはき出され、気管を通って体外へ呼出されます。
 B図は、肺胞内腔に炎症が起き、黄色い膿状の分泌物が溜まった模式図です。これは肺胞性肺炎の顕微鏡レベルでみた肺の末端で、肺胞腔が保たれず、酸素が毛細血管に届くまでに距離があり、二酸化炭素も毛細血管から肺胞へ戻れず、ガス交換が上手くできません。

肺胞性肺炎では、この肺内に溜まった膿のような分泌物が痰としてたくさん出ることが特徴です。
 原因は、肺炎球菌やインフルエンザ菌などの細菌感染です。
 C図は肺胞の壁(黒い線)と毛細血管(赤い線)の間に炎症が起き、線維や白血球や線維芽細胞が集まり、壁と血管の間が分厚くなった間質性肺炎の模式図です。(ピンク色の部分)肺胞壁の厚さのため、肺胞性肺炎と同様に、酸素の血液への取り込みと二酸化炭素の血管から肺胞への排出が妨げられます。この結果、体は酸素欠乏(低酸素血症)に陥ります。
 なお、間質性肺炎は様々な原因で起こるため、マイコプラズマ肺炎の様に、高熱が出るもの、治療によって跡形もなく治ってしまう急性のものから、大した熱は出ないものの、徐々に息苦しくなっていき、最終的には酸素を吸わなければならない慢性のタイプもあります。セキが出始めてから、急激に間質の炎症が広がり、一気に呼吸不全に進む危険なものもあります。このため、経過を追いながら、できるだけ原因に迫り、きちんとした対策が必要になります。レントゲンやCTのほか、様々な呼吸機能検査によって、間質性肺炎の程度を評価しなければなりません。なお、間質性肺炎の状態を簡便に血液で評価できる
KL-6が外来診療の場でよく用いられています。






正常な末梢の気管支と肺胞:
 毛細血管が肺胞にまとわりつき、効率よく酸素←→二酸化炭素の交換がしやすくなっています。

肺胞性肺炎:
 肺胞など、気管支の末端付近に細菌などによる炎症が起きています。このため、痰(黄色の部分)がたくさん出て湿った咳がでます。

間質性肺炎:
 肺胞と毛細血管の間に炎症が起こり、線維や細胞が溜まります。(ピンク色)このため血管と肺胞の距離が広がり、酸欠になります。

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