PM2.5の健康被害

 鼻や口から吸入されたPM2.5は、ノドから気管を通り、肺へと達します。粒子はこの経路のどこかに沈着したり、肺から吸収され心臓を通って全身にまわります。沈着した部位のみならず、吸収された有害物質も健康被害を起こす原因になります。では、実際にどのような健康被害が起こるのでしょうか?
気道系の障害:粒状物質(エアゾル)は、気管支粘膜を刺激し、咳を誘発します。また、ガス交換の場の肺胞に沈着し、炎症を起こすと酸素の取り込みをじゃまします。古くから炭鉱労働者に多かったけい肺は、細かい鉱物の粉やホコリを吸い込んで起こす慢性の呼吸器障害ですが、これも、同様な機序で発症する疾患です。このように気道の各場所に様々な炎症や障害が起こり、ぜん息の発病や悪化、気管支炎の慢性化

(COPDの発症)、呼吸機能障害などを起こします。ぜん息は、アレルギーによる気道の炎症と定義されているので、厳密には外れるわけですが、微粒子や化学物質によっても同様な病態が起こるのです。
循環器系の障害:PM2.5などの粒状物質は、心拍数を増加させ、炎症をおこし、血栓の主成分である血中フィブリノーゲン量を増加させ、血管拡張を阻害することが知られています。また、肺胞内で炎症を起こす粒子は、血管を収縮させるエンドテリンの産生を促し、血栓形成や動脈硬化を起こし、循環不全を起こすことが知られています。不整脈の増加も重大な影響です。
ガンの発生:肺ガンが最も重大な健康被害です。PM2.5が最もひどい一月の中国の空気は、喫煙室よりひどいと言われ、事実、北京市の肺ガン患者はここ10年で60%も増加しています。このため、中国では非喫煙者でも、毎日タバコを20本吸うのと同じ大気汚染に曝されているようです。
スギ花粉症:スギ花粉症は、スギの花粉を鼻に吸い込み、それがアレルギー反応を誘発し起こる鼻炎や結膜炎です。この花粉症が、ダンプカーなどディーゼル車が頻繁に通るエリアの人の方が、同じ地域でもスギに囲まれた山間部の人より発症率が高いことがわかっており、DEPが花粉症を引き起こすきっかけになるようです。

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人の呼吸器と粒子の沈着領域(環境省のHPから)

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