PM2.5の主な粒子

 前述の通り、PM2.5は様々な粒子の総称ですが、主な物質と由来、特徴などを見てみましょう。
SOx:硫黄酸化物と言われ、主に石炭を燃やしたときに排出される二酸化硫黄(SO2)と、それが空気中で酸化されてできる、硫酸(H2SO4)などです。強酸である硫酸が大気中で作られると、揮発性が乏しいため、気体でいることができず、細かい液体の粒子になります。この粒子が大気中に浮遊すると霧状になり、硫酸ミストと呼ばれます。四日市ぜん息など、日本で石炭が大量に使われていた時代には、実際に見られたようです。また、大気中のアンモニアと中和反応し、硫酸アンモニウム塩となり、この粒子もPM2.5として浮遊します。この仲間は、産業革命後のロンドン、高度成長期の日本、そして石炭を家庭用を含む多くの工場などで使っている現代の中国で、大気汚染の主な原因となっています。ちなみにピーク時の四日市のSO2の大気中濃度に比べ現代の中国の大都市では2倍以上、往時のロンドンでは10倍以上でした。また、有鉛のガソリンや軽油が未だに使われている中国などでは、自動車やディーゼル車もSO2排出の一因となっています。
NOx:窒素酸化物と呼ばれ、石油の燃焼、特に自動車の排気ガスに由来するものです。主なNO2は炭化水素とともに、太陽光による光化学反応によって、オゾンや過酸化物となります。これらは光化学オキシダントと呼ばれる非常に酸化力が高い物質です。この酸化力は生体の様々な細胞やタンパク質を酸化し、細胞障害を起こしたり、タンパク質の機

能異常きたします。近年は、日本では解決済みなのか、あまり注目を浴びませんが、ここ数年は時々、光化学スモッグ注意報や警報が発令された放送が入るので、再び注目すべき汚染物質なのかもしれません。NO2は最終的に硝酸となります。これは揮発性が高いので気体として大気中に存在し、やはりアンモニアと反応し硝酸アンモニウムなどの微細な粒子(固体)となって浮遊します。日本でも自動車由来の物質なので、都市近傍の主なPM2.5として知られています。
ディーゼル廃棄微粒子(DEP):トラックのマフラーから吹き出すあの真っ黒の煙がこれです。すすの炭素が黒い煙の正体ですが、それ以外にも様々化学成分が含まれています。この中で特に問題となる物質は、PAHと呼ばれる、多環芳香族炭素化合物です。これらはベンゾαピレンなど、ベンゼン環の亀甲模様が連なってできた炭化水素群で、発ガン性が指摘されているからです。ディーゼル車は燃費効率が良いので、地球温暖化の点では良いのですが、健康への影響は無鉛のガソリン車に劣っている部分もあり、欧州などでも環境に優しいクリーンエンジンという位置づけが見直されつつあります。PAHは大気中の発ガン物質のおよそ50%以上を占めており、排出基準などの規制によりある程度コントロール可能ですが、中国を含む途上国では十分な対策がとられておらず、日本に飛来する量も増加してくることが予想されます。






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