すこやか生活

薬の体内動態

 最初に心に留めておきたいことは、薬はサプリなどと違って栄養ではないことです。(鉄剤など除く)つまり、漠然と飲んだり注射をしていては意味がないのです。定期的に処方された薬を、適当に間引いて飲んでいる方を時々見かけますが、栄養と薬を混同しているためなのでしょう。
 次に、薬が体に入ってどのように局所に働くか見てみましょう。
 
静脈注射薬は一気に血管内に薬が入り血液中の濃度(血中濃度)が上がります。その後は体の各所の細胞に取り込まれて働き、最後は肝臓で分解されたり、腎臓から尿へ排泄され、速やかに血中濃度は下がっていきます。このカーブの下の面積(青斜線)が体内で働く薬の総量で、静脈注射薬は注射量のほぼ100%が血液中に反映されます。
 これに対し、
内服薬は胃を通って腸で吸収され、血中に入ります。その後は静脈注射と同じですが、図のように立ち上がりが緩やかで、山は小さく右に伸び、カーブの下の面積(緑網

)が注射より狭くなります。これは、吸収され血中濃度に反映されるまでに時間がかかり、効果は持続するものの注射薬より弱くなります。面積も内服した薬の量よりぐっと少なくなります。これは、内服薬の全てが吸収されるのではなく、一部はそのまま便に排泄されたり、吸収後、肝臓を一度通るので早めに分解・代謝されることが原因です。
 筋肉注射はほぼ全て吸収され、血中にはいり、スピード的にも静脈注射と内服のカーブの中間の形をとります。
 血液中の薬剤は、作用部位を含む臓器や組織に到達し、細胞膜表面の受容体(レセプター)に付着したり、細胞自身に入って作用します。薬の有効性や体内の動態は、本来、各臓器や細胞内の薬物濃度で判別すべきですが、生きている人の細胞や臓器を切り取って薬物濃度を確認することが困難なため、血液中濃度(血中濃度)で代用し、大まかな薬物動態を推し量ります。






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