血糖とインスリン

 I図は、血糖値とインスリン血中濃度の日内変動を示したグラフです。食事をすると血糖値がノコギリの歯状に上がります。(ピンク)それに併せてインスリン分泌の初期相の鋭いピークと、それに続くなだらかな小さな山が毎食ごとに出現します。(グリーン)血糖値、インスリン値とも、土台となる基礎値、基礎分泌の上に、食事に反応した山が重なるわけです。ここで、血糖値の山の高さを平準化し、1~2ヶ月間の平均の値をよく反映する指標がHbA1cです。食事をすると、十二指腸からGIPや小腸からGLP-1というインクレチンと呼ばれるホルモンが分泌されます。これらは、膵臓を刺激し、インスリンの分泌を促し2つの山を作ります。

 図IIのセットは、初期相、後期相ともにインスリンの分泌が不十分な糖尿病患者さんのパターンです。食事をして血糖値が上がっても十分なインスリンの分泌がないため、ピークは200を大幅に越え、次の食事前になっても血糖値が150を下回りません。この結果、HbA1cも8.6%と非常に高い値を示しています。このような方は、食事を制限するだけでは血糖値が下がらないため、インスリンを注射で補うか、膵臓からインスリン分泌を促す内服薬を使って体内のインスリン量を増やすしかありません。これによって、血糖値のピークを下げたり、全体のピンクの面積を下げることができ、HbA1cも下がってきます。






 図IIIのセットは、インスリン分泌、特に後期相は十分すぎるほど出ているのに血糖値が下がらないパターンです。これは、インスリン抵抗性と言われている状態で、インスリンが筋肉などの細胞に働く際、うまく作動せず、せっかくインスリンが十分あるのに血糖値が下がりません。インスリン抵抗性の原因は、食べ過ぎや運動不足による肥満です。従って、食生活を改善させることと日頃の運動量を増すことで肥満を解消できれば、インスリン抵抗性から脱却できます。また、インスリン抵抗性を改善させるメトホルミンや、ピオグリタゾンが効果的な場合があります。インスリン抵抗性はメタボの状況になると出てくるので、特定健診などで生活改善の必要ありとされたら、その時点で生活を改めれば先々糖尿病で悩まずに済みます。

インスリンの分泌は多いのに血糖値が高い

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