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中は胸焼けを覚えやすくなります。治療で使われる、H2受容体拮抗剤(ラニチジンなど)、PPI(オメプラゾールなど)は、特に催奇形性もないと考えられているため、症状がつらく食事が取れないときなどは服用可能です。 潰瘍性大腸炎 休薬によって炎症が悪化すると流産の恐れがあるため、メサラジン(ペンタサなど)やサラゾピリンは継続すべきとされています。レミケードなどの抗TNF-α抗体も理論的にほぼ安全と
考えられています。ステロイドは状況によって使用します。他の免疫抑制剤は原則禁止です。 関節リウマチ 治療の中心となっている、MTX(リウマトレックス)などの免疫抑制剤は催奇形性があるため、妊娠中の禁止薬剤に入っていますし、NSAIDsは一部も禁止されています。サラゾピリンは妊娠中も継続可能で、レミケードやヒュミラなどの抗TNF-α抗体も妊娠に影響しないと考えられています。
授乳と薬
日本の薬剤の能書きには、ほとんどの薬が母乳に移行するため授乳を中止するように書かれています。ごく少量母乳に移行し、その程度の量が果たして乳児に作用するのか確かめられることなく、事なかれ主義的に同じ文言が入っていることは大変残念で、このためお母さんが病気になったとき十分な治療が受けられなかったり、赤ちゃんが嫌いな粉ミルクを飲まされている不幸が国中でおこっています。 飲んだ薬が母乳に入るまでの流れを考えてみましょう。胃に入った錠剤は溶けて、薬によってその一部からほとんどが吸収されます。吸収された薬、血液に
入って薄まり、数リットル~数十リットルに1錠の濃度になります。そして概ね数時間のうちに肝臓で分解されたり尿へ排出され、検出できない濃度に薄まります。この過程で母乳は、血液の一部を用いて生産されますが、血液から母乳へ出る時点でさらに薄まるため、乳児の体内では母体の血中濃度よりずっと低くなる薬がほとんどです。母乳に薬が移行することイコール、薬が濃縮されて母乳に出て、乳児に悪影響が出るのではないので、ごく微量の母乳への移行に神経質になりすぎることはありません。 授乳中に明らかに避けるべき薬は、蓄積性のある放射性ヨード剤(バセドウ病などの治療で使用)、一部の抗不整脈剤、抗ガン剤などです。授乳しても安全と考えられている薬は国立生育医療センターのホームページに掲載されてます。主な薬をまとめておきます。 ご覧になって、お気づきと思いますが、妊婦や授乳しているママさん達が普通の病気に罹って使う薬は授乳に問題の無いものがほとんどです。薬は全て授乳に悪いものと過度に構えず、病気をしたら主治医と相談の上、必要な薬はきちんと使って病気を治すことこそ、お子さんのためになるでしょう。
授乳に問題の無い薬一覧 薬のタイプ 商品名・一般名 対象疾患 吸入ステロイド シムビコート 喘息 テオフィリン テオドール 喘息 抗ウイルス剤 タミフル インフルエンザ バルトレックス 帯状疱疹 抗ヒスタミン剤 ロラタジン 鼻炎やアレルギー ジフェンヒドラミン 同上 抗生物質 クラリスロマイシン 気道炎等 クリビッド 感染症 オラセフ 感染症 便秘薬 プルゼニド 便秘 甲状腺薬 チラージンS 橋本病 胃薬 ガスター 胃潰瘍、 逆流性食道炎 解熱鎮痛剤 カロナール 発熱、頭痛 降圧剤 アムロジピン 高血圧 (国立生育医療センター: 妊娠と薬情報センターより抜粋)