の薬以外効果が無いような特殊な状況では、薬の効果と問題の起こる確率を天秤にかけ、ギリギリの選択をしなければならないこともあります。

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するだけではなく、妊娠を希望したり、その可能性がある場合は前もって止めておくべきでしょう。なお、抗てんかん剤や難病で、そ

慢性疾患治療と妊娠

元々、継続的な治療が必要な方が妊娠した場合、または赤ちゃんが欲しい場合、以下の点に注意して治療を継続します。
高血圧
 妊婦さんは、妊娠高血圧や、妊娠高血圧腎症(妊娠中毒と呼ばれていた)などの原因で腎機能を損ねたり、血圧が上がる可能性があります。そこで、元々降圧剤を服用していた方、妊娠の最中に血圧が上がってきた方は、降圧剤の使用が必要です。古くから使われている薬の方が安全性のデータが豊富なため、最近の薬から、メチルドーパやヒドララジンなどに切り替えることがよく行われます。また、20週を越えたあとは、ニフェジピンCR、トランデードなども使われています。目標血圧は140/90mmHg以下です。なお、上記の妊娠高血圧などは、出産後12週以内に正常に服することがほとんどです。
糖尿病
 血糖降下剤などは、胎盤を通すため、出産児の低血糖を招く恐れがあり、胎盤を通さないインスリン注射に切り替えることがよく行われます。なお、切り替え時にコントロール不良になることもありますが、一時的な血糖の上昇は問題なく、胎児奇形の原因にもなりません。
バセドウ病
 広く用いられているメルカゾール(メチマゾールMMI)は臍・腸管などの奇形がしばしば見られるため、妊娠初期は極力この薬を避けてください。一般にプロピオサイロウラシル(PTU)が代用されます。また、妊娠を希望される方でメルカゾールを服用されて

いる場合は、PTUに前もって切り替えることが得策です。PTUは、肝障害を起こすことも多いので、16週以降、元々のMMIに戻すこともあります。
甲状腺機能低下症
 妊娠は代謝が増えるため、甲状腺ホルモンの需要も増加します。このためチラージンSの服用で、平常時にF-T4などの甲状腺ホルモンの血中濃度が正常に保たれていても、妊娠期間中に不足しがちです。早ければ6週程度でも不足することがあるので、定期的なホルモン検査で、不足分を速やかに補いましょう。
気管支喘息
 妊娠により胎児の分まで酸素を取り入れなければならない妊婦さんですが、週数が重なるにつれ、お腹が膨らみ横隔膜が肺を押し上げるため、深い呼吸がしにくくなります。一般に20%程度増加する酸素需要を賄うため、心拍数を増やすなど、酸素運搬に無理がかかります。喘息は妊娠によって特に悪化する疾患ではないため、特別な対策は必要ありません。喘息治療薬はどれも胎児に対する催奇形性や毒性が無いため、喘息のコントロールで使っている薬は妊娠中も引き続き使って下さい。むしろ、治療中止によって胎児に酸素欠乏がおこることの方が心配です。重症者で経口のステロイドを長期使ったり、大容量のステロイド吸入を行っている場合は注意が必要です。
逆流性食道炎
 胎児をはらんだ大きな子宮がお腹を圧迫し、胃が押し上げられるため、食道裂孔ヘルニアは悪化し、胃液が逆流しやすくなり、妊娠

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