内臓らしくない胸痛

 内臓の痛みを一口に定義することはできません。しかし、内臓の痛みらしくない痛みは次のようなものです。
1)体の外から押すと痛む
 胸部の内臓は、腹部と違い、筋肉だけでなく肋骨や胸骨で覆われています。さらに壊れ物を守るクッションでもある肺にも包まれているため、ちょっとやそっとで外部からの衝撃が伝わりません。このため、手で押して痛みを感じるようなら大概の場合内臓由来の痛みではありません。肋骨に沿って圧迫を加え

ると、骨折やひびの入っている場所で痛みが誘発されます。筋肉に傷がついている場合は、傷口を広げる方向に力が加わるとミシッと痛みます。50肩の痛みをイメージしてみてください。
2)体をひねって感じる痛み
 体をひねったり曲げる運動も、包まれ守られた内臓には力が伝わりません。このような動作で痛むようなら、傷ついたボディパーツのどこかに力がかかり、傷が押されたり引っ張られる変化が起こったことが予想される胸痛です。

内臓らしい胸痛






 胸部臓器に共通な痛みのパターンは特にないため、個別で行きましょう。
心臓の痛み(狭心痛)
 冠動脈と呼ばれる心臓自体の筋肉に酸素や栄養を送る血管に動脈硬化が起こり、一時的な酸欠を起こすのが狭心症です。また、完全に詰まってしまい血流が途絶し、心臓の一部の筋肉死んでしまうと心筋梗塞になります。狭心症では、酸欠が一時的なので、数分間にわたって胸が押しつぶされるような痛みを覚えます。歩行などで誘発された圧迫感は、立ち止まって息を整えるとすぐに酸欠が解消され、痛みが消失します。
 心筋梗塞の痛みは、狭心痛より強く、長引くのが特徴です。概ね30分以上持続し、場合によっては半日以上続く事もあります。狭心症より痛みが強いので、首や肩、背中まで放散(広がる)する事もあります。また、痛み以外に、不整脈が出て心臓が踊るような動悸がしたり、血圧が下がって血の気が引く感じを覚えたり、心不全の症状としての息切れや心臓の鼓動が早くなる場合もあります。これが行き過ぎると、脳へ血液がまわらず、失神したり突然死を起こしてしまいます。
解離性大動脈瘤
 心臓から出てすぐの大動脈が動脈硬化でもろくなり、高血圧の力で裂けるのが解離性

大動脈瘤で、心筋梗塞と並んで危険な病気です。心臓の上から下に沿って走行している血管が裂けるので、裂けていく方向へ痛みが進みます。心筋梗塞同様、「これはいかん」と、即座に救急車を呼びたくなるような、とても不快な痛みです。
食道の痛み
 胃酸が食道に逆流し、食道の粘膜がただれておこる胸焼けと言われる痛みが逆流性食道炎の特徴です。食道は心臓の裏側にあるので、よく心臓の痛みと間違われます。擬音語ではチクチク、ヒリヒリと表現されるのが食道痛です。痛みが上下したり、食後など食事と関係が合ったり、水を飲むと痛みが消失するなどが特徴的です。胃酸がこみ上げてくるため、逆流が強いとみぞおちから心臓の裏を通って喉まで痛みが上がってきます。しゃがむ姿勢など、お腹を圧迫すると誘発されます。軽い場合は胃酸などの市販薬で痛みが取れますが、たいがい PPIと呼ばれる、胃酸分泌を抑える薬が必要です。
 なお、食べ物がつまる場合は食道ガンなどによる通過障害が起こっているかもしれません。「つまり感」があれば、すみやかに内視鏡検査での確認が必要です。
肺の痛み
 スポンジのように柔らかい

(3 ページに続く)

痛みの原因となる胸のパーツ | 内臓らしくない胸痛 内臓らしい胸痛|
筋肉や乳腺の痛み 肋間神経痛ってなに?| 胸痛を自覚したらどうする?