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大腸菌の分類は以下の通りです。
1)無害な善玉大腸菌
2)病原大腸菌
a)腸管病原性大腸菌など
b)腸管出血性大腸菌(EHEC)
ほとんどの大腸菌は1)の無害な菌で、乳酸菌ど同様、大腸の中で静かに暮らし、人や動物と共生しながら腸の環境を整えています。川や海の水の中の大腸菌数を調べることによって、水がどの程度便で汚染されているか調べる指標となっています。 2)a)はいわゆる普通の食中毒の原因菌で、小腸や大腸に感染し、腹痛、下痢、発熱を起こします。東南アジアなどへの旅行中にかかる下痢の多くはこれが原因です。
2)b)の腸管出血性の大腸菌は形は大腸菌であるものの、ベロ毒素と呼ばれる毒素を作り、重篤な腸炎を起こします。ベロ毒素は赤痢の毒と同一か類似のもので、腸の細胞のタンパク質合成を阻害し、健全な活動を妨げるため細胞は死んでしまいます。粘膜表面細胞が死ぬと、皮膚の皮がむけたのと同様に出血が始まります。以上が血便や、腸からの出血が起こる原因です。 EHECや赤痢が産生するベロ毒素は腸だけに作用するならまだしも、毒素は血液に入り、全身へ回って腎臓などに到達します。そこでは血液を濾すフィルターである糸球体などの血管上皮
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細胞を壊し、フィルターが凸凹になります。すると、凸凹なフィルター内を通る赤血球がこれにぶつかって傷つき、溶血します。こうしてフィルターが完全につまると急性腎不全となります。ここまでいくと、人工透析しか手だてが無く、あえなく死亡する人も出てきます。これが溶血性尿毒症症候群(HUS)と呼ばれるEHECの最も恐ろしい合併症です。 EHECの菌種はO157、O111、O26などが有名で、これまで健常な牛の1〜2%が持っているとされてきました。しかし、焼き肉チェーンでO111での死亡事件があった後の、動物衛生研究所による調査では、肉牛294頭の糞の7.5%にEHECの菌が検出されました。また、微量な菌を検出する遺伝子検査では、なんと"86%"の牛にEHECの遺伝子が検出されています。この頻度では、食べ方によっては、いつ我々もEHECに感染しても不思議ではありません。もちろん、菌が口に入ってもごく少量なら発症しないことは言うまでもありません。 EHEC感染症は、下痢や腹痛になってから1〜2日で腸から出血します。さらに運の悪い10人に1人がHUSへと進みます。下痢から出血へ進んだら要注意です。初期治療は、ニューキノロン(クラビッドなど)やホスホマイシンなど抗生物質です。
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