すこやか生活

胃腸の感染症

 数年に一度、必ず重症な食中毒が世間を騒がせます。平成23年度は、O157ならず、O111という聞き慣れない大腸菌による、出血性
食中毒が発生しました。焼き肉屋のユッケ(生肉)を食べて感染し、死亡者や重症者が続出しました。また、例年冬を中心にノロウイルスや、ロタウイルスの集団発生が起っていますが、この季節性も絶対的なものではなく、一年中何らかの胃腸の感染症が巷に溢れています。
 これまでは光学顕微鏡を用いた細菌学の歴史の流れで、胃腸の感染症というと、コレラ、ビブリオ、サルモネラ、キャンピロバクター、赤痢、大腸菌など、細菌が中心的な病原体として注目を集めてきました。ところが、実際の胃腸感染症のほとんどがウイルス性です。幸い最も多いウイル

ス性の胃腸炎は、比較的軽症なことが多く、時に重症化して命に関わる細菌性胃腸炎に比べると地味な存在です。しかし、人数が多いだけに大部分が軽症でも運が悪いと、脱水や、食事が摂れず、日本のような先進国でも入院の原因になったり、高齢者や幼弱者では死亡の原因になることがあります。発展途上国では年間80万人もの子供達がウイルス性胃腸炎で亡くなると言われています。また、細菌性と比べて感染力が強いため、家族全員がかかってしまったり、職場の大部分の人が下痢しているなど集団発生が頻発することも見逃せません。今回は、ありふれた病気と、その中に含まれた困った胃腸炎の予防と対策について整理してみましょう。






ウィルス性胃腸炎

俗に、胃腸のカゼなどと呼ばれるウイルス性胃腸炎の主なものは、成人に多いノロウイルスと、保育園などで集団発生する、小児に多いロタウイルスがあります。この多い少ないは文字通りで、ノロウイルスは小児もかかりますし、ロタウイルスも成人に感染します。
ノロウイルス
 生ガキによる食中毒で有名ですが、食べ物だけでなく、糞便や吐物の付着物に残る僅かなウイルスで人から人に感染し、こちらの方がずっと多いと考えられています。一般に1mlの汚物に10万〜10億ものウイル

スがいると言われ、このうちたった18個が口に入ると感染してしまいます。感染1〜2日後に、腹痛、下痢、おう吐、発熱が出現し3日ほどで回復します。症状が治まっても2週間は便中にウイルスが出ますので注意が必要です。
ロタウイルス
ノロウイルスより症状は軽めで有熱期も短いのですが、下痢とおう吐が強いのが特徴です。欧米諸国ではワクチンが開発されており、今後導入されると先進国では小児の入院患者の減少、発展途上国では乳幼児死亡率を下げると期待され

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