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糖尿病の新展開

 糖尿病は血糖値が上がる病気です。血糖値が長期間高いと、全身の血管に動脈硬化を起こします。動脈硬化が心臓に起こると、狭心症、心筋梗塞を起こし、脳なら脳梗塞、腎臓なら糖尿病性腎症になり、目にくると糖尿病性網膜症を併発します。心筋梗塞や脳梗塞は、直接死につながったり重い後遺症を残します。腎症なら進むと人工透析を週3回各4時間程度受けることになり、網膜症は失明につながります。問題の多い全身の合併症のほか、若くして白内障になったり、免疫力が下がり感染症に弱くなり、手足がしびれるなど、糖尿病は数々の余病を起こす、「基礎疾患のホームラン王」です。
 血糖値が上下するメカニズムは左図Aのように考えられてきました。食事で血糖値が上がるとその情報が膵臓のβ-細胞へ届き、そこからインスリンというホルモンが分泌されます。これが筋肉などへ行き渡ると糖(ブドウ糖)が利用され、血糖値がさがります。この過程で、インスリンの分泌が不十分だったり、筋

肉でインスリンがきちんと働かない場合に高血糖となります。前者を「インスリン分泌不全」、後者を「インスリン抵抗性がある」と呼び、糖尿病の治療はこの2点を解決することでした。
 小腸の粘膜細胞の一部がインスリン分泌を刺激するインクレチンというホルモンを分泌していることが従来より知られていました。インクレチンはGIP(glucose-dependent-insulinotropic polypeptide)とGLP-1(glucagon-like-peptide-1)の2つがあり、糖尿病治療への応用が期待されていました。しかし、どちらもタンパク分解酵素のDPP-4(dipeptidyl peptidase-4)によってすぐに分解され、血液中に留まることができず応用が思うように進みませんでした。ところが、このDPP-4の働きを抑える物質が開発されたり、壊れにくいGLP-1類似の物質が作られ一気に糖尿病治療の流れが変わる可能性が出てきました。この新しい流れを中心に糖尿病治療についてまとめます。






A:従来の血糖とインスリンの関係

B:インクレチンとインスリン

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