予防接種は個人と社会を守る武器

 感染症は、かかった個人の病気ですが、病原微生物を他人にうつすなら、もはや個人の病気ではすまされません。昭和30年以前に蔓延していた結核は、BCGが接種されると激減し、現在では15歳以下の初発患者は年間200人以下になりました。BCGは現在6ヶ月までの赤ちゃんの95%に接種されています。同様に、ポリオは1950年代に大流行し、それが静まった1960年の届け出患者は5000名を越えていましたが、経口生ワクチンが普及した現在では、野生株(自然にいるポリオウイルス)に感染した発症者は皆無になりました。日本脳炎も1960年代後半までは年間1000人の発症も見られましたが、現在は全国で年間10人以下の発症数です。日本脳炎ウイルスは現在で西日本を中心に豚で感染が見られておりウイルス自体は存在するものの予防接種のおかげでごく希な疾患となりました。

 これらの感染症が減少した理由は、結核予防法や予防接種法による定期接種が行き渡り、社会全体の免疫力があがって病原微生物が姿を消しつつあるからです。
 ところで、MMRワクチンで無菌性髄膜炎が1200人に1人発症したため、1993年に接種が中止されました。接種予定者の麻疹単独ワクチンの接種漏れなどによって、近年、麻疹の流行が散発するようになったのは周知の事実です。一般に人口の90〜95%が予防接種を受けるとその感染症は根絶されると言われています。天然痘はその良い例で、世界中でほぼ100%近い人が接種を受けたため地球上には生物兵器以外の天然痘ウイルスは根絶されたと考えられています。
 以上より、定期予防接種となっているワクチンは、個人を守るためだけではなく社会を守るためにも、できる限り全国民が接種すべきものとお考えください。






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