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「インフルエンザの予防注射を受けたので、軽くかかってしまった。」と、おっしゃる方が時々います。これは事実無根です。理由は現在日本で使われているインフルエンザワクチンは、不活化ワクチンだからです。ウイルスをニワトリの受精卵で増やし、取り出したウイルスをエーテルで細胞膜(油膜のようなもの)を溶かして不活化し、溶けなかった抗原性のあるタンパク質をかき集めたものです。抗原タンパクは少量しか採れないので、劣化しないように添加物を加えてできあがります。このような不活化ワクチンには生きているウイルスは含まれず、そのかけらだけでできています。従って、予防注射を受けて軽くかかるということはあり得ないのです。 これに対して、麻疹や風疹、ポリオ、BCGの生ワクチンは弱毒化されたとは言え生きた病原微生物が入っています。このため、接種により感染し、一定の潜伏期を経た後に微熱が出たり、発疹が出る場合があります。現在不活化ワクチンは、接種後7日間は次の予防注射をしないことになっ
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ています。生ワクチンは28日間次の接種を控えます。麻疹や風疹、おたふく風邪の潜伏期は2〜3週です。生ワクチン接種後28日間観察すれれば、潜伏期を長めに考えても軽くかかったかどうか確認できるから様子をみています。 観察期間を厳しくとって、一つずつ接種しているのは日本だけです。定期予防接種対象疾患が日本の倍近いアメリカでは(日本8種、アメリカ15種)、同じ日にどんどん注射していかないと埒があかず、同時接種が一般的です。今後、予防接種の種類が増えたり、同時接種になっても、これが世界の常識なので心配無用です。 なお生ワクチンは微生物そのものなので、不活化ワクチンと比較して抗原性が高く、一回接種で長期間効力があります。ただ、一度かかったら二度とかからない終生免疫ができると考えられていた麻疹やおたふく風邪なども、10〜20年と時がたつにつれ、免疫力が低下することがわかってきました。このため、近年では生ワクチンであっても、数年後に再度接種すべきであると考えられています。そこで、近年MRワクチンが中1、高3の年齢のお子さんに接種されるようになりました。 なお、生ワクチンと不活化ワクチンは、どちらの方がよいという問題ではなく適材適所で使い分けられています。実際、ポリオでは弱毒ワクチンの株が巷に広がり、毒性を取り戻す可能性が警戒され不活化ワクチンが日本以外で使われ始めています。逆に接種のしやすさや、病気の感染部位とワクチン接種部位を同じにしてよりいっそうの効果をねらった、インフルエンザの弱毒化生ワクチンを点鼻接種している国もあります。
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