すこやか生活

第10巻7号 

ページ3

(2 ページから続く)

3)代謝拮抗剤
物質が合成されるには材料が必要です。その材料が不適切なものであれば、できあがった物質は使い物になりません。この原理を利用した薬が代謝拮抗剤です。細胞核を作るのに必要な核酸に似た物質を使った抗ガン剤などが具体例です。核酸のウラシルに似た、5-FU(5-フルオロウラシル)は、DNAが合成されるとき、チミンやウラシルの代わりに核酸の配列に入り込み、核酸の鎖が伸びるのを止めてしまいます。
 同じく、細胞核の成熟に必要な葉酸の拮抗剤であるMTX(メソトレキセートやリウマトレックス)は、葉酸を活性型の葉酸に変化させる酵素の働きを止め、細胞の代謝に必要な葉酸を減らすため、ガンやリウマチの治療に用いられます。

4)物理的・化学的な直接作用
 便秘薬の酸化マグネシウムは飲むとそのまま便に出てきます。塩であるため、水分を吸収するので便が水っぽく軟らかくなります。同じく、食物繊維で、水を吸収するコンニャクの粉であるバルコーゼは物理的な働きで便秘に効きます。
 制酸剤として使われるアルカリ性の重曹は、化学的に胃酸(塩酸)を中和します。消毒薬のアルコールなども化学的な性質を薬として使っています。
5)分子標的薬(抗体など生物学的な製剤)
 古典的なものでは、まむしの毒に対する抗血清や破傷風に対する免疫グロブリン製剤がそれです。最近では、様々な病気をターゲットとした遺伝子組み替え型のモノクローナル抗体を簡単に作ることができるため、多くの新薬が出てきました。代表的なところでは、乳ガンで使われるハーセプチン、リウマチやクローン病の病因である、体内のTNF-αに対するレミケードなどが有名です。






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