すこやか生活

第10巻7号 

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薬の5つの働き方

 薬の作用する部位は大きく分けて5つあります。細胞の受容体、酵素、代謝経路(物質が変化するルート)、物理的・化学的な直接作用、抗体です。順にみていきましょう。
1)細胞の受容体を介した薬の働き
 体を動かしたり、様々な臓器の運動や神経反射を起こすために、指令系統を通じてホルモンなどの物質を介した情報のやりとりが行われています。細胞側で情報を受けとる場所は受容体(レセプター)と呼ばれます。通常の刺激と同様に受容体にくっつき、情報とし

て働く物質をアゴニスト(作用薬、刺激薬、作動薬などと呼ばれる)、刺激やアゴニストの代わりに受容体にくっつき、刺激情報をブロックする物質をアンタゴニスト(拮抗薬、遮断薬、ブロッカー)と呼びます。たとえば、緊張して心臓のβ受容体に働くアドレナリンが分泌されると、心臓がドキドキします。ここでβ遮断剤を使うとアドレナリンの代わりにβ遮断剤が受容体にくっつき、アドレナリンの働きがブロックされ、緊張が強くてもドキドキしなくなります。


2)酵素の働きに作用する
 体の細胞は、様々な酵素の働きにより、タンパク質や脂肪、デンプン質などを作っています。また、同じく酵素の働きによって、不要なものを分解処理しています。これらの化学変化を助ける酵素の働きを、強めたり弱めたりする薬がこの仲間です。
 

たとえば、スタチン系というコレステロールを下げる薬は、肝臓でのHMG-O還元酵素の働きをじゃましてコレステロールの合成を妨げます。また、熱冷ましや頭痛薬として使われる消炎鎮痛剤(NSAIDs)は、シクロオキシゲナーゼと呼ばれる酵素を抑え、炎症物質ができるのを防ぎます。

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