ウエストナイル熱とニパウイルス

 どちらも脳炎を起こすウイルスです。
ウエストナイル熱
 熱帯性の蚊が媒介する、アフリカ原産のウイルスです。1999年にニューヨークで発生し、注目を浴びました。元々鳥に宿るウイルスで、鳥から鳥へ蚊がうつして回るウイルスです。それがいつの間にか人間にも感染するようになりました。日本脳炎の宿主の豚と違い、鳥はどこへでも飛んでいくので広がる速度も速く、2004年の時点でアメリカ大陸を横断し西海岸のカリフォルニアまでウイルスは到達し脳炎患者が発生しています。元々アフリカでは80%の感染者は気が付かずに治まり、症状が出る人も発熱、頭痛など風邪のような症状で済んでいました。しかし、アメリカに引っ越したウイルスは脳炎を起こす確率が極めて高いのが特徴で、患者の実に3割近くが髄膜炎や脳炎を起こすと言われています。また、群れをなして脳炎で死んでいる鳥たちも見つかっています。今のところ治療や予防法が無いため、日本に入ってこないことを祈るばかりです。日本では余り見かけなくなった日本脳炎ウイルスが、流行地の東南アジアより渡り鳥によって

頻繁に持ち込まれる事実があることから、仮に日本に直接入らなくても近いうちに他国を経由して入り込む可能性が充分あります。有効なワクチンや治療薬の開発が急務となっています。
ニパウイルス
 1998年から1999年にマレーシアで発見された脳炎を起こすウイルスです。最初は養豚業者に感染者が多かったため、日本脳炎ではないかと考えられていましたが、最終的には大コウモリが元々の宿主とわかりました。大コウモリから豚に感染し、それが人にうつったのです。マレーシアでは265名の入院患者が出ましたが、実に4割が死亡しました。また、マレーシアから豚を輸入したシンガポールでも感染者、死亡者が出ました。幸いこのときは豚を100万頭以上処分し、約半年で流行は収束しました。その後、2004年にもバングラディッシュで猛威をふるうなど、今後も監視の目を弛めることができない感染症です。現在の抗ウイルス剤で有効なものはなく、発症すると致死率の高いウイルスですのでこちらも早急に検査、予防法の開発などが進むことを願うばかりです。






エボラ出血熱とラッサ熱

エボラ出血熱
  コンゴ付近で毎年小流行の見られるウイルス感染症です。ジャングルのなかに潜んでいるウイルスが、時々人間界に出てきて大暴れするものです。死亡率は50%と高く、血液その他の体液に加え、唾液や汗にまでウイルスがいるため、感染力が高く、治療や対策に当たる人は厳重な防護服などを身につけなければなりません。急激に発症する発熱、全身衰弱、頭痛の

ほか、嘔吐や下痢などの胃腸症状がよく見られます。末期になると下血(腸からの出血)するなど出血症状が起こるため、出血熱と呼ばれています。この病気は幸い大きな流行は無いのですが、極めて危険なため、自然に治るまで他の人に感染させないように隔離するぐらいの対策しかありません。そのため、早期発見が最重要と考えられています。4 ページに続く)



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