SARSを振り返って

  近年、AIDS、炭疽菌、ウエストナイルウイルスなど恐ろしい感染症が話題を集めていますが、2003年でもっとも注目を集めたのがSARS(Severe Acute Respiratory Syndrome:重症急性呼吸器症候群)ウイルスです。2002年11月に中国広東省で発生したと見られ、3月〜4月に香港から世界中に広がりかけました。コロナウイルスの新種とされ、感染から発病までの潜伏期間が2〜7日、推定致死率は65歳以上で50%を超えました。ちなみに24歳以下では1%未満、25〜44歳が6%、45〜64歳が15%です。咳に含まれているウイルスを吸い込むことで感染するため、マスクをしないで感染者と接した医療従事者の感染は56%以上にのぼったと言われ、感染力が極めて強いと考えられています。
 症状は高熱に加え筋肉痛があるなど、インフルエンザに似ています。間質性肺炎を起こすので、全員ではありませんが空咳や呼吸困難などの症状も出てきます。肺炎ですのでレントゲンやCTで肺炎像も見られます。インフルエンザとの区別は、インフルエンザの迅速診断で陽性か陰性か、そ

してインフルエンザの治療薬の効き目です。インフルエンザの治療薬が無効な時は、速やかにレントゲン撮影し肺炎の有無を確認する事が大切と思われます。
 治療は現在のところ決めてとなる薬はありません。C型肝炎の治療薬レベトール(リバビリン)や、インフルエンザの治療薬のタミフル(オセルタミヴィル)などの抗ウイルス薬が使用されました。しかし効果の方はハッキリとしません。今後もう少し治療の道が明らかになるのを望むばかりです。
 さて、予防ですが、マスク、使い捨てガウン、ゴム手袋を使ったり、手洗いやうがいの励行が効果的と考えられています。その中でもマスクの使用がもっとも予防効果があるようです。N95という感染症専用のマスクだけでなく、外科手術用のマスクでも予防効果が確認されているため、万一流行地へ行くときなどは是非マスクを持参してください。ワクチンなどの開発も行われていると思いますが、一刻も早く完成することを祈りましょう。






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