鎌倉市大船 山口内科 すこやか生活第21巻5号

胃腸・肝臓の老化

胃腸:老化による胃腸の変化は軽微です。粘膜や壁でぜん動運動をつかさどる平滑筋も老化で弱ることはまれです。大腸も同様で、わずかに通過速度が遅くなりますが、ほぼ問題なしです。それでは、なぜ、便秘胸焼けがするのでしょうか?排便は腸のぜん動運動が大きな原動力と思われていますが、さにあらず。最も大切なのは腹筋の力です。マヨネーズのチューブを絞るイメージです。加齢とそれにともなう運動不足は腹筋が便を絞り出す力を弱め便秘になります。
 高齢者は若い人に比べ胸焼けや胃痛、食後の気持ち悪さを訴える傾向にあります。これは、主に逆流性食道炎で、スッパイ水がこみ上げてくるイメージです。多くは肥満や経年の過程で胃が上に押し上げられ、そのうちに胸と腹の仕切版で

もある横隔膜の食道裂孔が押し広げられ、逆流が助長されます。また、高齢者はヘリコバクター・ピロリ菌の感染率が高く、経年変化も加わり萎縮性胃炎となり胃がん発生の母地となっていることが多く、内視鏡検査での胃のチェックが欠かせません。
肝臓:肝臓の細胞は、薬物や体の老廃物を分解したり、体に必要なタンパク質を合成したり、脂質やデンプン質などの栄養を蓄える働きがあります。この細胞の数は加齢によって減少しますが、もともと相当余力を持った数となっていますので、多少減っても問題になることはありません。ただ、他の要因も加わって、服用中の薬剤の効果が強く出る場合があり、長年服用中の薬も減量が必要になることもあります。

老化と体の変化
運動器の老化
| 心・血管・肺機能の老化と症状 | 老化による腎と排尿、水と塩分