鎌倉市大船 山口内科 すこやか生活第21巻2号

すこやか生活

感染症の歴史と予防接種

天然痘そのものやその軽症患者から採取した水疱の液を健常者に植え、予防とする試みが行われていたようです。
 その後、人間社会に猛威を振るった結核菌に対するBCGや、罹って生き残れば大人になれる「命定め」と呼ばれた麻疹(はしか)やポリオ、破傷風、ジフテリア、百日咳、風疹、水痘、インフルエンザなど、様々な予防接種が開発され国の事業として行われています。
 一時、ワクチンの副作用で訴訟となり政府が及び腰になって、予防接種の位置づけを「社会全体を守ること」から、これからは「個人を守ること」と格下げしてしまいました。しかし、これにより接種率が大幅に低下し、麻疹や風疹などの感染症の流行を招き、他の先進国から感染症の蔓延国と名指しされました。近年は政府も重い腰を上げ、再度、予防接種行政を推進する方向に転換しました。
 これにより、近年、乳幼児の髄膜炎予防の
Hibワクチンや、髄膜炎菌ワクチン、水痘ワクチン、B型肝炎ワクチン、成人の肺炎球菌ワクチンや子宮頸ガンワクチン、風疹予防事業としての抗体検査や予防接種が行われるようになりました。今回はこの中で、主に大人の予防接種を中心に整理しました。

 19世紀末から20世紀初頭は、ハンセン病、マラリア、腸チフス、結核・・・・と、様々な細菌や原虫が発見され、人類を苦しめていた様々な感染症の撲滅への緒につきました。顕微鏡など医療機器の進歩に加え、科学技術の進歩で消毒薬や抗生物質の開発、衛生管理の発達などにより、20世紀中盤には、多くの感染症の予防や治療が本格化してきました。
 その後、電子顕微鏡の発明により、光学顕微鏡では見えない微少な物質の発見が可能となり、ウイルスが発見され、新たな感染症の原因微生物として認知されました。これによって、それまでインフルエンザの原因菌として考えられていたインフルエンザ菌は、上気道炎や肺炎、副鼻腔炎、中耳炎、髄膜炎を起こす細菌ではあるが、流行性感冒(インフルエンザ)の原因微生物ではないことがわかるなど、感染症学のブレークスルーが起こりました。
 さて、人類初の予防接種は18世紀末のジェンナーによる種痘が有名で、動物のウイルスである牛痘を人に植えるとそれに対する免疫ができ、類似の天然痘に対しても免疫力を発揮できるというもので、ウイルス発見のはるか150年以上前の出来事です。しかし、紀元前1000年ころから、

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