24時間型社会の矛盾と問題

 「24時間働けますか?」という、キャッチフレーズがテレビのコマーシャルで流れていた時代がありましたが、近年はコンビニが増え、いつでもどこでも買い物ができ、食事にも困らなくなりました。また、コンビニに限らず、工場は生産性を上げるために24時間稼働し、消防や警察業務は生活を守るため、医療・介護は施設介護や在宅訪問診療が行われるなど、社会全体が24時間を通して動くようになりました。交代制のシフトワークをする人は増加し。2012年の統計では、全労働者の21.8%にものぼっています。これにより、多くの人々が体内時計の乱れによる問題を抱えています。具体的な問題を見ていきましょう。
睡眠障害:昼夜のシフトに組み込まれるとまず起こるのがこれです。夜に働いて朝に帰宅し、日が高くなった10時に寝たりする場合です。疲れが溜まっているので簡単に眠れそうですが、体内時計が"起きろ!"っと邪魔をして寝付けません。日の光を浴びることで体内時計の時間設定が行われるので、仕事帰りにサングラスをしたり、部屋を真っ暗にするなどして少しでも日光を浴びない工夫が必要です。また寝る前にコーヒーなどでカフェインを摂ったり、お酒を飲むのも不眠を助長し厳禁です。
肥満と生活習慣病
 人の食欲も、体内時計によって調整されています。朝8時ころが食欲があまりない時間で、
夜8時がもっとも食欲がある時間です。夕食をがっつり食べてしまうというのもむべなるかな。これは体を休める前にエネルギーを蓄えておくという動物の本能にも一致し、日内変動ではなく年内変動ですが、冬眠前の熊と同じです。食欲が旺盛な夜の時間に勤務すると、どうしても夜食やおやつも食べ過ぎてしまいます。この結

果、肥満になったり、糖尿病や高コレステロール血症など生活習慣病が出てきます。従って、シフト勤務の場合は特に、夜の食べ過ぎに気をつけなければなりませんが、なかなか本能には勝てません。そこで、常時体重を計り、気をつけなければという気持ちを持ち続けることが大切です。血圧は、朝起きるときに上がり、日中には少し下がり睡眠中は低めに維持されます。この血圧調整のメカニズムの中には、体に塩分を溜めて血圧を維持するアルドステロンというホルモンがあります。アルドステロンの分泌も体内時計に制御されており、体内時計が狂うとこのホルモン分泌を促す遺伝子の発現が異常に増加し、高血圧になるのではと考えられています。
狭心症や心筋梗塞:シフトワークをするとこれらの虚血性心疾患になりやすいことがわかっています。前述の糖尿病、高血圧、高コレステロール血症などは皆、虚血性心疾患のリスクなので、それだけでもこれらが増えることになります。また、睡眠時間で言えば、7~8時間寝ている人が一番発症しにくく、睡眠時間が6時間未満だったたり逆に9時間以上だと発症しやすいことが知られています。
脳卒中:これも概日リズムの狂いで発症が増えることがわかっています。脳卒中や虚血性心疾患のどちらも血管のつまりであることが多く、1日を4等分すると午前6時~12時までの間が最も発症しやすい時間帯です。
乳ガンや前立腺ガン:どちらも、性ホルモンが発がんに関与していることがしられていますが、体内時計が狂うと性ホルモンが過剰分泌がおこるので、これらのガンになりやすいと考えられています。
不妊症:同様に、ホルモン分泌のサイクルが狂うので不妊になったり、月経不順になりやすいようです。

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