医師は薬手帳の何を見ているのか?

1)個人差がある薬の働き方がわかる
 薬は体の不調を解消する働きを持つ化学物質です。同じ名前の病気でも、そのときの状態によって使う薬が異なります。また
、類似の薬でも、効果の強い弱いの差があったり、使用量の違いで効き目や副作用もまったく違ってきます。このため過去に使われた薬で、その患者さんに何が起こっていたのか、類推しイメージを描きます。
2)数年間の治療歴で個別の問題点を探る
 毎年、春と秋によくカゼ薬を飲んでいる、6月になるとぜん息の薬を吸入しているなど、季節季節の病気の起こり方のパターンを確認しています。上記の場合は、ウイルス性のかぜではなく、花粉症などのアレルギーによる気道の疾患が疑われます。
3)問診で未申告な病気や問題を知る
 自分のところでも問診票で、既往歴(今までにかかった病気)や薬のアレルギーなどを前もって尋ねますが、どうしても漏れることが避けられません。薬の手帳を確認することで、現在治療中の病気を知ることができ、過去に罹った疾患を類推することも可能で、それを元に再度尋ねれば、患者さんの体の出来事の見落としが減ります。
4)治療が上手くいっていない理由を探る
 病院から処方された薬が効

かない場合、別の医療機関を受診する人がおられますが、薬手帳を見れば、何が上手くいっていないのか、どうやったらよくなるのか、たいがいわかるものです。薬手帳を忘れると上手くいかなかった原因がわからないどころか、効かなかった薬を再度処方してしまい、大変な時間とお金のロスを招きます
5)薬の体への影響をイメージする
 薬は体に有意義な働きだけがでるとは限りません。様々な体の不具合や症状の原因の一端が使用中の薬の影響であることも多く、服用が必須なものは除いて、変更可能な場合も少なくありません。複数の薬の複合的な作用をイメージしながら、目の前の患者さんの体の出来事を、思い描いています。
6)薬の使い方を絶えず勉強している
 研修医や、若い医師ならともかく細かい薬の使い方を他の医師から学ぶ機会はそう多くはありません。他の医師、特に内科医以外が出した処方は、何を意図して治療をしているのか、また、専門外であまり使わない薬の働きをイメージするのに役立ちます。特に、1度目の薬が効果が乏しく、2度目、3度目に替えて効いた場合などはとても勉強になります。

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