食事を摂ることは、体内に必要な様々な物質を取り込む手段です。水分の他、エネルギーや体を作る材料となる炭水化物(糖とデンプン質)、タンパク質、脂質の3大栄養素ほか、鉄やカルシウム、ナトリウム(NaClなど)、カリウムなどの金属、各種ビタミンほか、消化吸収できない食物繊維などを食事で摂っています。ほんの50~60年前までは、先進国の一角であった日本でさえ、様々な栄養素が不足し、栄養を十分摂ることが、健康な体を作り、病気を防ぐ最も重要な方法と考えられていました。現在の日本はモノがあふれ、食べ物もまさに飽食の時代です。こんな時代になってさえ、人は半世紀前以前の考え方が頭から抜けず、栄養を摂らなければ元気に暮らせないと考えてしまいます。これは、人類が猿から分かれる以前から近代になるころまで、食べ物を追い求めることが生活の全てだったからで、今となっては迷信に過ぎないことがDNAに組み込まれているのかもしれません。
 それはさておき、現代の食生活で注意すべきポイントは、
1)必要以上の栄養素を摂らない
2)好きな物ばかり食べずバランスよく
 この2点に集約されま

す。
 生活習慣病の代表の糖尿病は、糖やデンプン質、そして脂質などエネルギーとなる栄養素の摂りすぎが主な原因です。高血圧はどうでしょうか?動脈硬化、腎臓病ほか様々な原因もありますが、最も大きな原因は
NaCl(塩分)の摂りすぎでしょう。脂質異常症の大代表、高コレステロール血症も家族性高コレステロール血症のような体質の遺伝も関与しますが、やっぱりコレステロールが多い、肉、卵、乳製品など美味しい食事が原因です。脳卒中や、虚血性心疾患などの血管の病気も、これらの生活習慣病がベースになっていることがほとんどです。また、大腸ガンは肉食や動物性脂肪が原因で、乳ガンも動物性脂肪の摂りすぎや高カロリー食が原因とされています。食道ガンはアルコールが関与し、肝臓ガンはC型、B型肝炎ウイルス以外では、アルコールや過食による脂肪肝炎からガンが出ると考えられています。以上より、現代の食事療法のポイントは、栄養を摂るという考え方から、栄養を摂らないという引き算の食生活が重要になってきていることです。そろそろ栄養豊富な、美味しいものを食べなければという強迫観念を払拭しましょう。

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