腎性貧血

 高齢化や、医療の進歩による腎疾患を持つ方の寿命の延長によって近年増えてきている貧血が腎性貧血です。CKDと呼ばれる慢性腎臓病の概念も浸透し、腎性貧血を意識する場面が多くなってきています。CKDは様々な原因の腎臓病を包括した概念です。これをもう少し具体的な原因疾患に分解すると、@糖尿病性腎症、A慢性糸球体腎炎、B高血圧や動脈硬化症による腎硬化症などが中心です。@やBは高齢化や社会の変化により増加しているため、CKDが増加するのも合点がいきます。
 腎臓は主に老廃物の排泄や、水分、塩分の再吸収を行うことでこれらの調節を行っています。その他、血圧を上げるアンジオテンシンを作る酵素のレニンや、エリスロポエチンというペプチドでできた赤血球の増殖因子(ホルモンのようなもの)などを分泌する働きもあります。このエリスロポエチンは骨髄中の赤芽球系の前駆細胞(幼弱な細胞)に作用し、赤血球への分化や増殖を促します。ところが、腎不全などで腎臓の働きが低下すると、このエリスロポエチンが作られなくなり、正球性正色素性貧血(正常な大きさで適量なヘモグロビンを含む)に

なります。腎機能はクレアチニンという物質の排泄能力で評価されますが、正常値は1.0mg/dl以下です。この値が1.6mg/dl以上になると少しずつ腎性貧血が始まり、概ね2mg/dlを超えると明らかになってきます。ちなみに人工透析を受けなければならないクレアチニンの値は610mg/dlくらいです。
 腎性貧血は血液を作っている骨髄に問題がないので、不足しているエリスロポエチンを補えばよいので、クレアチニン値が
2mg/dl以上で貧血のある方はエリスロポエチン製剤での治療が行われています。
治療)
 エリスロポエチンはインスリンと同様のペプチド(タンパク質の小型のもの)であるため、内服するとお肉と同様に胃腸で消化され、アミノ酸に分解されて効果を失います。従って、体内に導入するには注射するほかありません。
 以前は、週に1〜2度注射する製剤しかありませんでしたが、近年は、薬効時間の長い、ネスプ、
ミルセラが出てきて、2〜4週に一度注射すれば済むようになりました。
 なお、腎不全の方は食事制限も厳しいため、鉄その他の造血に必要な成分の過不足を定期的にチェックする必要があります。

貧血と立ちくらみ | 鉄代謝と鉄欠乏性貧血 | 腎性貧血
食品やサプリと鉄
| 貧血を疑う症状