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人体に含まれる鉄の量は3〜4gです。このうち70%が赤血球のヘモグロビンの鉄として存在し、残りはミオグロビン(筋肉内の酸素と結合するタンパク質)や代謝酵素、細胞内の呼吸に関与する電子伝達系に含まれたり、脾臓などでの貯蔵鉄として保存されています。赤血球の寿命は120日です。4gの鉄の70%が赤血球由来で、そのうちの1/120が寿命で壊れます。計算してみると、一日に鉄の23mg分が壊れ、新たにその分が必要ですが、実際は壊れた赤血球に含まれる鉄の大部分が再利用されるため、体から喪失する鉄、新たに食事から吸収する鉄は、たった1〜2mgに過ぎません。このごく微量な鉄分の十二指腸からの吸収をコントロールしているのが、肝臓で作られるヘプチジンというペプチド(タンパクの小さいもの)です。 食品に含まれる鉄は三価のFe3+として存在し、胃酸によって二価のFe2+に変換され、十二指腸で吸収されます。血管に入った鉄は、トランスフェリンというタンパク質に結合して、全身に運ばれ利用されます。また、余った鉄はフェリチンというタンパク質に内包され、肝臓や脾臓などの細胞内に蓄えられます。このため、鉄が欠乏すると、鉄の吸収・運搬が活発化するため、血中トランスフェリンが増え、この総量を反映するTIBC値(総鉄結合能)が増加します。鉄が欠乏すると、赤血球を作るために貯蔵鉄がどんどん利用されるので、フェリチンが減少します。こうして、鉄欠乏性貧血では、Hb値や血清鉄(Fe値)が下がるだけでなく、TIBCは増加し、フェリチンが低下します。 鉄欠乏性貧血の原因 1)出血などでの鉄の喪失
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女性は元々月経があるので、その量が多いとこのタイプの貧血になります。その他子宮内膜症や、子宮筋腫などによる過多月経でもよく見られます。男性や中高齢者で鉄欠乏性貧血が見られる時は、消化管のがんが潜んでいる場合があり、要注意です。 2)鉄の体内への供給不足 これは、胃腸に問題があって食物に含まれる鉄の吸収が上手くいかない場合や、偏食などで、鉄の豊富な食品を食べていない場合などです。具体例を見てみましょう。胃がんなどで胃を切除された場合は胃酸の分泌が低下するため、吸収しやすいFe2+への変換ができず、せっかく食物で鉄を摂っても吸収できません。また、さまざまな腸の病気で十二指腸を切除した場合も、鉄を吸収する場がないため、体内に鉄を取り込めず、鉄が欠乏します。 3)鉄の需要が増す場合 成長期や妊娠時は体や胎児が大きくなる分、鉄の需要が増加します。また、マラソンなど激しい運動をすると、鉄の需要が増し、欠乏する場合があります。 治療 基礎疾患がある場合は、その治療を優先しますが、基本的に鉄の補給を行います。フェロミアやフェログラデュメットなどの鉄剤(増血剤)の内服薬が使われます。胃腸症状が出ることがあるので、吐き気止めや胃薬と併用したり、吸収がよくなるとされるビタミンCとともに内服することもあります。いろいろ工夫しても飲めない方は、インクレミンシロップという小児用の鉄剤のシロップを試してみるのがよいでしょう。1日量が10ml程度として、もし飲みにくい場合は3mlでも5mlにでも減らせば飲めることが多く、鉄剤が飲めない鉄欠乏性貧血の方の治療の切り札となります。シロップもどうしても飲めない場合は、フェジンなど、鉄剤の注射薬で鉄の補充を行うこともできます。
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