鎌倉市大船 山口内科 すこやか生活18巻8号

すこやか生活

アレルギーマーチ

 アレルギー体質で起こる病気は様々ですが、よく見かけるものは気管支ぜん息やアレルギー性鼻炎などの気道の疾患と、じんま疹や湿疹、アトピー性皮膚炎などの皮膚病です。これはアトピー性素因という体質を親から受け継ぐことから始まります。その体質に加え、様々な抗原に感作(過敏性を獲得する)されることで病気が起こります。感作は、胎児のうちから胎盤を通して始まっています。出生後は卵やミルクその他、様々な食物を口にし食品に含まれているタンパク質などについて感作が起こります。続いて環境に浮遊する花粉やホコリ、ダニ、犬やネコのふけなど、吸入抗原に対しても感作が起きます。これら感作の結果、小さいときにアトピー性皮膚炎、じんま疹、湿疹など皮膚の病気が始まり、年が進んで皮膚の病気が落ち着くと同時に小児ぜん息が始まり、少年期になってぜん息が治まるとアレルギー性鼻炎が続き、人によってはそのまま成人型の気管支ぜん息になっていくというのです。これは図で示すようにアレルギーがどんどん景色を変えながら行進していく感じなので、アレルギーマーチと呼ばれています。途中から左へ抜けて治って行く場合もありますが、概ね上方向へ進むと考えられて

います。
 さて、本当にこんなにシステマティックに交代しながら進んでいくのでしょうか?恐らくその年齢その年齢で最も気になる病変部位が表に出ていて移り変わっていくように感じるだけであり、どの時期も多かれ少なかれ、皮膚も気道にも同時に問題を抱えていると思われます。小さなアトピーのお子さんは、皮膚と同時に鼻をグスグスしていることが多く、小児でぜん息が問題になっている方のほとんどが鼻をよくすすりながら、体をボリボリ掻いています。つまり、セキをしているからぜん息、皮膚をボリボリ掻いているからアトピー性皮膚炎、クシャミをしているから鼻炎と騒ぎになっているだけで、丁寧に観察すると様々な症状が同時に出ています。このため、アレルギー疾患と診断されたら他の部位の症状がないか確認することが大切です。なお、マーチに乗ってどんどん進んでいるように見えても心配しすぎないでください。成長するうちに左に抜けていくお子さんが多く、上方向に進んでも重症化するとは限りません。現在できる最善のことをしてあげましょう。

アレルギーマーチ

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