発熱とは?

 発熱とは、単に熱を発生することではなく、普段と比べて体温が高いことを意味します。一般には37.5℃以上を発熱と呼びますが、これは平熱が36.5℃である平均的な人や、もともと平均が37.0℃に近いお子さんを基本にしたものなので、自分の平均体温が低い人は当てはまりません。従って、普段の平均値より0.5℃高ければ熱がありそうで、1.0℃以上高ければ明らかに発熱していると言えます。インフルエンザが流行っている時に37.0に達していない方が風邪の症状で来院し、熱っぽく体の節々が痛いと言われ調べてみるとインフルエンザの反応が出ることがしばしばあります。聞くと平熱が35℃台であることがほとんどで、自分の平熱より1.5℃くらい高かったりします。普段から熱を測り、自分の平熱を知っておくことは、体の変調を知る第一歩になるのです。
発熱の原因
 カゼだから熱が出るといった、単純なものではありません。ウイルスや細菌による
感染症である、肺炎や扁桃炎、中耳炎、副鼻腔炎、腎盂腎炎、虫垂炎、急性大腸炎などのほか、免疫の異常で起こる関節リウマ

チ、膠原病、各種のガン、白血病やリンパ腫のような悪性腫瘍、強い薬疹のようなアレルギー疾患など、様々な病気で発熱は起こります。これらに共通している事項は、強い炎症が起こっているということです。一つ一つの炎症は原因や仕組み、対象となる体内の臓器や組織が全く異なるのでまとめることは困難ですが、どの炎症においても関与する白血球の中のリンパ球から"サイトカイン"という物質が出ています。サイトカインは、白血球による微生物を飲み込むことによる退治、IgG抗体などの免疫抗体による外敵に対する攻撃とともに免疫力の一端を担っています。具体的には、IL(インターロイキン)、TNF(トゥモールネクローティックファクター)、IFN(インターフェロン)などの物質です。これらは直接微生物の攻撃に使われる他、他のリンパ球や白血球との連携を取るための情報の伝達にも関与します。例えば、サイトカインによって細胞膜のアラキドン酸から作られたPGE2(プロスタグランディンE2)は、血液に乗って脳に達し、体温中枢の視床下部に働きサーモスタットの温度を36.5℃から38.0℃などの高さに上げる情報としても働きます。全身の筋肉は、このサーモスタットの設定温度に従って、震えて熱を発生し、設定体温に上げます。細胞膜のリン脂質に由来するアラキドン酸からは図のように様々な物質ができます。熱を下げる消炎鎮痛剤(NSAIDs)はこの流れに関与するCOXの働きを抑え、発熱のメッセージとなるPGE2を減らします。

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