腸の薬の考え方

 小腸は比較的病気がまれで、大腸も便秘や痔、ガンを除くと急性腸炎や過敏性腸症候群くらいであとはまれな病気ばかりです。腸の主な症状は下痢、腹痛、下血などですが、これらの症状があるときは炎症を起こしている可能性が高いと考えられます。下痢は腸の粘膜に炎症が起こり、食物が吸収されない場合、粘膜から水分などがしみ出てくる場合、そして腸の蠕動が速すぎて、食物が十分吸収する間もなく柔らかい下痢便として出てきしまう場合があります。そこで、下痢の治療は、①炎症を抑え吸収をよくしたり、粘膜からの分泌を減らす。②消化を促進し、吸収しやすくする。③下痢の水分や原因物質を吸収する。④腸の動きを鎮め、腸の内容物がゆっくり肛門方面に動いてくるようにし向けるなどが方針です。
①炎症を鎮め、粘膜からの分泌を減らす
 細菌感染なら抗生物質、炎症性腸疾患なら、メサラジンやその関連薬、ステロイドホルモンなどが該当します。分子標的薬のレミニールやヒュミラもこの目的です。また、水分がしみ出てくる腸粘膜を薬剤の膜で覆い、水がしみでてく出てくるのを防ぐ収斂剤のタンナルビンもこの仲間です。

②消化吸収を促す
 胃のところで述べた消化剤が該当します。
③吸着剤
 下痢を起こす腸内の有害物質や下痢の水分を吸着し、下痢便を穏やかに固めていきます。アドソルビンが代表で、他の散剤と混合して処方されることの多い下痢止めです。感染性腸炎などでも安心して使えます。過敏性腸症候群で下痢の時は水分を吸い取り、便秘の時は食物繊維様の働きで便通が良くなる、ポリフル(ポリカルボフィルカルシウム)も似た働きがあり水を吸着します。
④腸運動抑制薬
 ロペミン(ロペラミド)が代表で、腸の運動神経に作用し、その働きを抑え、下痢を止めます。ただ、炎症が強く下痢便で腸がパンパンになっているときに無理に腸運動を止めるとお腹が痛くなるので要注意です。過敏性腸症候群で腸が敏感になるのを抑え下痢を鎮める、トランコロン、イリボー、腹痛の時に使う副交感神経の抑制剤であるブスコパンなども、ロペミンとは腸の運動を抑える機序が違いますが、この仲間です。
 その他、腸の環境を整える乳酸菌製剤も広く使われています。






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