鎌倉市大船 山口内科 すこやか生活第  10巻 号外 21年5月10日


新型インフルエンザと
季節性インフルエンザ

2009年4月末より、豚インフルエンザS-OIV(swine flu, Swine-Origin Influenza Virus)新型インフルエンザの話題で持ちきりです。このウイルスは表面のタンパク質の種類により、H1N1型と呼ばれ、いわゆるA型インフルエンザに属します。どうやら本年3月末にはメキシコと接する米国南カリフォルニアで検出されており、それ以前からメキシコで流行が始まっていた模様です。ウイルスの遺伝子は今までのものと異なり、北アメリカの豚の間で流行っていたインフルエンザウイルスの遺伝子を含み、一部ユーラシア大陸の豚のウイルス遺伝子も含まれていました。豚のインフルエンザウイルスが混ざりあって交配したウイルスです。これが人に感染しやすく変化し、メキシコから北米へ広がりました。
 季節性のインフルエンザとは、スペイン風邪、アジア風邪、香港風邪と呼ばれた過去に世界的な大流行をみた"元"新型インフルエンザウイルスの子孫が毒性を弱めたものです。これらは毎年冬になると、順番に流行を繰り返します。季節性のインフルエンザは夏の間も人々の間で細々と係累をつなぎ、ウイルスにとって都合のよい冬になると勢いづきます。
 流行の冬が終わった後、まだ巷に残っているウイルス株や世界の他の地域で流行ったウイルス株の種類が調べられ、翌年流行しそうなウイルス株を予測します。予測されたウイルスをターゲットとし夏の間にこしらえたワクチンを皆さんは予防接種しています。
 さて、季節性のインフルエンザは少しずつ形を変え人々の免疫力をくぐり抜けようとします。しかし大元の部分は変化しません。このため、予防接種を毎年きちんと接種している方や、過去に同じ種類のインフルエンザに罹(かか)って免疫をお持ちの方に感染しても、体が記憶している免疫力に反撃され、大病の原因にはなりません。ところが、まったく新しいタイプのウイルスが出た場合は、人々は皆ウイルスに対する免疫が無いためひとたまりもありません。そこで、ひとたび新型インフルエンザが発生しパンデミックと呼ばれる流行が世界に広がると大勢の人が亡くなります。新型インフルエンザが問題になっているのはこんな理由です。新型インフルエンザといっても、スペイン風邪と、香港風邪では死亡率がまったく違います。1918年に発生したスペイン風邪は世界で4000万人が死亡しました。香港風邪では100万人程度です。同じ新型でもウイルスの毒性の違い、過去のウイルスとの類似性による人々の免疫力の残存の違いなどにより危険度がまったく異なるわけです。強毒性で、人々に免疫力がまったく無いと考えられる鳥インフルエンザとこのたび流行の兆しがある豚インフルエンザとは訳が違います。そこで違いに応じて対応も変える必要があります。現在、鳥インフルエンザの対応策がそのまま流用されようとしていますが、今後見直しが行われるでしょう。
新型インフルエンザと
季節性インフルエンザ
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