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血液の細胞は骨髄という骨の中心部分で作られ、元々の幹細胞が少しずつ分化して(枝分かれして)各種の細胞になっていきます。この分化・成熟課程に遺伝子の異常が起こると、途中段階の細胞がそれ以上成熟できず、しかも同じ細胞がどんどん複製され、血液中などにこの異常な幼若細胞が充満します。一部の血液の腫瘍は、胃ガンや大腸ガン、肝臓ガンのように塊(かたまり)を作らないため、外見や、CTやMRIなどの画像診断では腫瘍とは認識できません。血液中に異常な白血球が充満する白血病が典型です。塊を作る腫瘍は、リンパ節や、脾臓、その他の臓器に腫瘤を形成するリンパ腫、そして骨髄に形質細胞というBリンパ球系細胞の腫瘤を形成し、異常な免疫グロブリンを産生する骨髄腫があります。 急性白血病 前述の骨髄細胞由来の急性骨髄性白血病とリンパ性細胞由来の急性リンパ性白血病があり、前者は主に成人に多く、後者は小児に多い病気です。急性というのは、原因不明の発熱や貧血などの症状が出て、治療を始めないと1ヶ月程度で命を落とすくらい、急激に悪化するからです。 慢性白血病 こちらも骨髄性とリンパ性がありますが、どちらも高齢者に多い病気です。数ヶ月、数年単位で進む病気で、近年は治療の進歩もあり、完治はできずとも、10年以上何事もなく過ごしている人が増えています。 悪性リンパ腫 腫瘍性のリンパ球が血管の中でなく、リンパ節や、胃粘膜その他の組織に集まり、増殖する疾患です。 骨髄腫 骨髄に形質細胞の腫瘍が集まり、異常な免疫グロブリンや、その一部を止めどなく作ると、免疫力を発揮することができず、血液がネバネバしてきます。 腫瘍細胞は、どれも次の4
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つの問題を引き起こします。 1) 元々の細胞の持つ機能を果たせない。 例えば、感染した細菌を退治する好中球が幼若な骨髄芽球で置き換えられると、細菌感染に弱くなります。様々な免疫を担当するリンパ球がリンパ芽球に置き換えられると免疫機能が働きません。形質細胞が働かないと、免疫グロブリンが作られません。 2) 正常な他の細胞を追いやってしまう。 骨髄中に骨髄芽球ばかりになると、リンパ球や単球が十分作られず、これらの果たす機能が行えません。また、赤血球の元となる赤芽球や血小板の元となる、巨核球が作られないと、貧血になったり、血小板が不足し、出血しやすくなります。 3) 粘膜などの正常な組織を冒す。 骨髄やリンパ節以外に腫瘍細胞が広がると、その組織が果たす機能を果たせません。たとえば腸の粘膜にリンパ球が浸潤するリンパ腫なら、消化吸収が阻害され、下痢を起こします。 4) 急速な細胞の増加により、細胞の死骸が増えて起こる症候 細胞・組織の死骸は、血液の凝固を促し、様々な場所で血栓を作るだけでなく、血小板や凝固因子を使い果たしDICと呼ばれる血が止まらない状況をまねきます。 血液腫瘍の治療は、抗ガン化学療法が中心ですが、細胞特有の弱点を狙い、副作用が少なく効果的な、分子標的薬が使われる疾病も増えてきました。また、DICを起こし易く難治だった、M3と呼ばれる白血病の未熟な細胞を、正常に分化誘導させる治療も行われています。
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